工場の省配線を実現するリモートI/O入門
耐環境に強い「Robust I/O」で実現する次世代制御【前編】

日本

従来の工場配線では、制御設計や設備立ち上げを担うエンジニアの多くが産業用PCやPLCなどの制御コントローラと制御盤の入出力部分を直接接続する方式が広く用いられてきました。
しかし、接続する機器が増えるほど盤内の配線が多くなり、機器との距離によって配線が長くなるなどの課題もありました。ノイズや断線などの不具合が発生した場合、原因の切り分けや復旧対応にかかる負担も大きくなります。
こうした課題の解決策として、近年は省配線による立ち上げ工数削減や保全効率向上への要求により、「リモートI/O」の国内需要が高まっています。
本記事では、前後編に渡ってリモートI/Oの基本的な仕組みを紹介したうえで、具体策として耐環境性に優れたコンテックの「CONPROSYS® Robust I/Oシリーズ」(※以下、Robust I/Oシリーズ)を用いた省配線の考え方や、組み合わせやすいPLC制御のポイントを解説します。

リモートI/Oとは?基礎の仕組みと特長

リモートI/Oの導入で工場の省配線を実現できる理由は、従来の配線方式で生じやすい課題と対比するとより明確になります。
ここでは、リモートI/Oの基本的な仕組みと特長を、従来の方式との違いを踏まえて解説します。

制御盤に負荷が集中する従来方式の課題

従来の工場配線は、工場内で使用される制御が必要な機器を全て制御盤へ個別に引き込む構成になるため、接続点数の増加に伴って制御盤内のI/Oカードや端子の数が膨大になり、盤内配線が複雑化しやすい点が課題です。
また、機器との距離が離れるほど配線が長くなり、配線ルートの確保や施工の手間も増えます。
盤内配線が複雑になると、増設やレイアウト変更のたびに配線の見直しが必要になり、改造や保守にかかる工数が増大します。さらに、ノイズや断線などの不具合が発生した場合は、原因箇所の切り分けに時間を要し、復旧までの影響が大きくなる点にも注意が必要です。

I/Oカードの機能を分散させる「リモートI/O」で省配線を実現

リモートI/Oとは、機器の設置場所に近い位置へ入出力ユニットを配置し、現場側の配線を短い距離で集約する方式です。入出力信号を個別に引き込む代わりに、制御盤側に繋げる通信ケーブルを1〜数本と少ない数で接続できる点が大きな特長です。
代表的な通信方法には、Ethernet(LANケーブル)や、RS-485があります。
Ethernetは工場内のネットワークで広く用いられる有線通信方式で、PLCや産業用PCなどの上位の制御装置やネットワーク機器と接続できます。一方、RS-485はノイズ耐性に優れ、長距離伝送にも適したシリアル通信方式で、現場機器との通信で採用されるケースが多くあります。
リモートI/Oを導入すると、制御盤内に配置するI/Oカードや端子の点数を削減できます。その結果、盤内配線の複雑化を抑え、制御盤の省スペース化が可能になります。さらに、現場単位で分散配置できるため、増設やレイアウト変更の際に配線の引き直しを最小限にでき、施工工数やコストの削減にも効果が高くなります。

リモートI/OとModbusの関係

Modbusとは、米Modicon社が開発した通信プロトコルで、機器間でデータをやり取りするために用いられます。工場の制御システムでも広く採用されており、リモートI/Oの入出力データの読み出し・書き込みにも利用されます。
通信の基本の仕組みは要求・応答であり、要求を出す側のクライアント(旧称マスタ)が、要求に応答する側のサーバ(旧称スレーブ)へ問い合わせを送り、サーバが応答します。リモートI/Oでは、この仕組みを使って入力状態の取得や出力値の設定を行います。Modbusは1979年に公開された歴史のあるプロトコルですが、仕組みがシンプルで扱いやすく、汎用性と信頼性が高いことから、現在もリモートI/Oを含むさまざまな制御機器で共通プロトコルとして利用されています。

耐環境を実現した「Robust I/Oシリーズ」とは?


リモートI/Oは、多数の機器を接続するシステムにおいて重要な役割を担う装置です。想定外の停止は設備全体に甚大な影響を及ぼすおそれがあるため、工場や屋外などの過酷な環境で使用する場合は、安定稼働を支える耐環境性と信頼性が重要になります。
コンテックのRobust I/Oシリーズは、このような過酷な使用環境を前提として設計されたリモートI/Oです。一般的なリモートI/Oは、制御盤内など比較的環境条件が安定した場所への設置を前提に選定されることが多く、温度変化やノイズ、誤配線といった要因が重なると、想定外の停止や障害につながるリスクがあります。これに対してRobust I/Oシリーズは、工場内の現場設備や屋外への設置を想定し、厳しい環境下でも運用を継続しやすい設計思想を採用している点が大きな特長です。
耐環境性の確保にとどまらず、障害の予防や影響範囲の抑制、立ち上げ・保守を見据えた運用性まで含めて、現場での扱いやすさを重視しています。

Robust I/Oシリーズの主なメリットと特長

Robust I/Oシリーズは、現場配線の省配線と分散配置を進めながら、工場や屋外などの過酷な環境でも安定稼働を支える耐環境性と運用性を備えたリモートI/Oです。
ここでは、導入効果をイメージしやすいように、主なメリットと特長を6つの観点に整理して解説します。

1. 省配線と分散配置を実現する接続構成(デイジーチェーン/短距離配線)

従来の制御盤へ直接配線する方式では、接続機器が増えるほど配線点数が増え、盤内配線が複雑化しやすい点が課題でした。Robust I/Oシリーズでは、現場側でI/Oを分散配置しながら省配線を実現できるように、LAN2ポートモデルによるデイジーチェーン(数珠つなぎ)構成に対応しています。 デイジーチェーン自体は一般的なリモートI/Oでも採用される構成ですが、Robust I/Oシリーズでは高い耐久性能を確保しつつ、使いやすさと汎用性を考慮した基本機能として搭載している点が特長です。現場のセンサやアクチュエータ(モータやバルブなど動作を担う機器)の配線は短距離かつ少本数で集約でき、制御盤側はLANケーブル1本で接続できます。その結果、配線の引き回しを簡素化しやすく、設備レイアウトの自由度が大幅に向上します。

2. 安定稼働を支える耐環境性能(ESD/EFT/サージ)

リモートI/Oを選定する際は、温度や振動だけでなく、さまざまな電気的ストレスに耐えられる設計であるかどうかが安定稼働の鍵になります。制御現場では、これらのストレスが想定外の停止や誤動作の原因になるケースも少なくありません。電気的ストレスの代表例には以下のようなものがあり、いずれも故障・部品損傷・誤作動など、機器に悪影響を与える可能性があります。

  • ESD(静電気放電):人間の体・服に溜まった静電気が一気に放電される現象。
  • EFT(電気的ファストトランジェント):リレー接点などの開閉や、微細な振動で短時間にオン/オフを繰り返すチャタリングに伴い、短いパルス状の高周波ノイズが高速に繰り返し重畳する現象。
  • サージ:落雷などの影響で電源ラインに一時的に発生する高い電圧。

Robust I/Oシリーズは、IEC 61000-4-2(ESD)、IEC 61000-4-4(EFT)、IEC 61000-4-5(サージ)の各試験に適合しており、電気的ストレスが重なりやすい環境でも安定稼働を支える耐環境性能を備えています。

3. 広温度範囲(-25~75°C)対応で温度変化に強い

電子機器は、温度が機器の規定範囲を外れると、部品特性の変化による誤動作や寿命低下の要因になり得るため、温度変化が大きい環境では対応温度範囲が重要です。Robust I/Oシリーズは、動作時:-25~75°C(相対湿度10~90%)、保管時:-30~80°Cの広温度範囲に対応しています。
そのため、季節や稼働状況によって温度変化が大きい環境でも使用しやすく、制御盤内だけでなく装置付近や屋外設置を想定したシステムでも温度条件を踏まえた柔軟な設計が行いやすくなります。

4. 誤配線やスパイク電圧に備える入力保護(過電圧保護/過電流保護)

現場配線では、立ち上げ作業や配線変更時の誤配線や機器の接続・切り替えに伴うスパイク電圧(瞬間的な過電圧)によって、入力回路やモジュールが損傷するリスクがあります。
Robust I/Oシリーズは、アナログ入力・デジタル入力チャネルに過電圧保護機能を備えており、高電圧スパイクや誤配線によるモジュール損傷を防ぐ設計になっています。
また、アナログ入力チャネルには過電流保護機能も備えており、電流ループ内で高電流・高電圧が発生した場合でも、電流測定への影響を抑えるように保護されます。入力トラブルが発生しやすい現場作業時でも、システム全体の停止リスク低減につながります。

5. 用途に合わせて選べるI/Oラインアップ(DI/DO/AI/AO)


Robust I/Oシリーズは、デジタル入出力(DI/DO)と、アナログ入出力(AI/AO)を中心に、さまざまな現場用途に合わせてモジュールを選択できるI/Oラインアップを豊富にご用意しています。
Ethernetタイプでは、アナログ入出力、デジタル入出力に加え、測温抵抗体(RTD)や熱電対に対応したセンサ入力、リレー出力も用意されています。
また、Ethernetタイプの一部機種(CPSR-ET7000/CPSR-ET7200)には「I/Oペアコネクション機能」を搭載しています。これは、入力チャネルの状態が変化したタイミングで、対応する出力チャネルに信号を出力できる機能です。信号ケーブルで入出力を直結していた単純な連動を、ホストコントローラ側のユーザープログラミングなしで実現できます。
例えば、センサ入力(ON/OFF)に連動して、警告灯やブザーを動作させるといった用途では、構成をシンプルに保ちやすく、立ち上げや保守の負荷低減にもつながります。

6. Modbus TCP/RTU対応で既存設備へ統合しやすい

既存設備との親和性は、リモートI/Oを現場に導入するうえで重要な要素の1つです。通信方式が限定されると、新旧設備の混在や段階的な更新が難しくなるケースもあります。
Robust I/Oシリーズは、「Modbus-TCP(Ethernetベース)」と「Modbus-RTU(RS-485ベース)」に対応しています。
既存設備の通信方式に合わせて機種を選択できるため、新設ラインと既存ラインが混在する現場でも、段階的な更新や統合を進めやすい点が特長です。
Modbus TCPとModbus RTUの違いを整理すると、次の通りです。

項目 Modbus RTU Modbus TCP
通信媒体 RS-485(シリアル) Ethernet(LAN)
通信形態 シリアル通信 TCP/IP通信
基本的な配線 バス型(マルチドロップ、数珠つなぎ構成が一般的) スイッチを介したスター型(ツリー型を含む)
通信速度 比較的遅め(ボーレート設定に依存) 比較的速い(ネットワーク帯域に依存)
想定される利用シーン 装置付近や工場内の機器接続 工場内ネットワークや上位システム連携

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