阪神高速グループには病院施設のコンサルティングを手掛ける企業もあり、救急医療の現場から病院に対して、リアルタイムな動画配信ができないかとの相談が寄せられていました。
このような背景から、高速道路の維持・管理で培ってきた動画配信技術を応用し開発したのが、「救急医療用リアルタイム動画配信システム「Dr.now(ドクター・ナウ)」です。救急現場や救急車から患者の“今”の状況や観察情報を病院に、鮮明な画像で伝えることが可能になりました。
医療現場での実用化にあたり、横須賀共済病院(神奈川県横須賀市)と三浦市消防本部(同三浦市)において2009年12月から実証実験を実施。その結果高い評価を受け、同病院、さらに呉共済病院と呉市消防局(共に広島県呉市)において試験運用が行われています。
救急医療は時間との戦いであり、救急隊員は一刻一秒を争うなかで、さまざまな患者の傷病、病態を的確に見極め、医師と連絡を取り合い迅速に対処する必要があります。その要である情報伝達の部分は、今まで電話による音声情報のみに頼っていました。緊迫した状況下での聞き取りにくい音声や、実際の状況が見えない医師からの指示で動く救急隊員たちには、過酷な負荷がかります。
Dr.nowはこれらの問題を解消するものと期待されていますが、実運用に向けて、救急現場からのリアルタイムな動画を用いた医療行為に対する早期の法的整備が望まれています。