名鉄EIエンジニア株式会社様

経験・熱意・工夫でAI画像解析技術を徹底活用 地域の実態に即した踏切監視システムを実現

名古屋鉄道を中心に近隣の鉄道各社における設備施工・通信システムの開発を行っている名鉄EIエンジニアは、AI画像解析の実績を持つトヨタシステムズ、鉄道機器メーカーの東邦電機工業とプロジェクトチームを組織し、AIによる画像解析を取り入れた踏切監視システムを稼働させました。システム要件を満たすエッジAIコンピュータとしてDX-U2200が採用されています。

キーワード
  • ICTシステム
  • エッジAI PC
業種
  • 運輸・交通
目的
  • 顧客サービス強化
  • 業務効率向上
  • 省人化
  • 機能強化
  • コストダウン

踏切近くの電柱に取り付けられたカメラとAIによる踏切監視システムが鉄道の安定運行と地域に暮らす人々の安全を見守っている 踏切近くの電柱に取り付けられたカメラとAIによる踏切監視システムが鉄道の安定運行と地域に暮らす人々の安全を見守っている

数ある踏切の安全をAI画像解析の技術で守りたい

当社が主に設備施工を行っている名古屋鉄道には現在全路線合わせて1,000か所ほどの踏切があります。道路と線路が交差する踏切は重大な事故が発生しやすい場所であり、その安全を守るのも当社の大切な役割の一つです。踏切の安全を守る仕組みとして「踏切障害物検知装置」というものがありますが、踏切の環境は千差万別で設置が難しい場合もあり、現状名古屋鉄道ではすべての踏切に設置されているわけではありません。また、踏切の両端からレーザーを照射し遮る障害物を検知するという仕組み上、自動車のような大型の物体は検知しやすいものの、身幅の狭い人については検知しづらいという難点もあります。人の検知については3DのLiDARを使うことで精度を上げることが可能で、首都圏の鉄道会社では導入実績もあるそうですが、非常に高価なシステムとなるため、多数の踏切に設置するには比較的安価に設置できるシステムが求められました。
そのような課題がある中、遮断桿や緊急停止ボタンの状況などを監視する踏切状態監視装置の設置とあわせてカメラを同時に設置し、踏切装置の監視だけではなく、AIなどを使って安全性の向上にも活用できないか、というプランが名古屋鉄道の中で持ち上がりました。というのも、まれに踏切から線路内に侵入してしまうというケースがあり、従来のシステムではそのようなケースを検知できなかったからです。そして、せっかくカメラを付けるのであれば、AIによる画像解析の技術を取り入れ3DLiDARによる異常検知に相当する安全性の向上につながるシステムが実現できないか、と模索が始まりました。

希望要件を満たしていたコンテックのエッジAIコンピュータ

名古屋鉄道の要望を受けて、名鉄EIエンジニアから複数のメーカーに相談したところ、すでにAIの画像解析実績を持つトヨタシステムズさんから、ぜひチャレンジしたいというお話をいただき、プロジェクトに参画していただくことになりました。さらに、鉄道機器のスペシャリストである東邦電機工業さんにも加わっていただき、本格的に開発がスタートしました。
プロジェクトの体制は整ったものの、取り組むべき課題は山積みでした。中でも特に大変だったのがシステムの根幹となるAIの学習作業です。踏切の設置環境は様々なので、必ずしも同様の状況を同じように検知してくれるとは限りません。とにかくできる限りのデータを読み込ませ、誤検知があればそれをまた学習させるという作業を繰り返して目標となる精度まで高めていきました。
AIの学習を進める一方で、検知した異常に応じてどのような動作が適切なのか、状態監視装置との連携はどうするのか等、安全を確保する仕様を決めるため、各社のノウハウを持ち寄り議論を重ねました。一つでも多くの踏切事故を無くしたいという名古屋鉄道の思いを実現させるため、低コストで導入するために、装置の保安基準が厳しい「保安装置」ではなく「安全支援装置」として位置付けるなど、できるだけ多くの踏切に設置するための工夫も取り入れています。
また、AIの開発はNVIDIAが提供する Jetsonを内蔵した評価キットで進めていましたが、現場に投入するにはJetsonを搭載したエッジAIコンピュータを選定しなければなりませんでした。今回のプロジェクトは複数の企業が参画していることもあり、何かトラブルがあった際に商習慣の異なる海外とのやり取りで戸惑うようなことは避けたく、できれば国産を採用したいという思いがありました。そんな折、コンテックからJetson搭載の新製品が出るという情報を得たのです。コンテックの製品は別の監視システムの開発を行った際に採用実績があり、一貫して安定稼働しているため、高く評価していました。サポート体制についても非常に安心感があり、迷わず採用を決定しました。加えて、当社の各システムと連携するために必要なデジタルI/Oにも対応しているので助かりました。機種については、現段階で必要なスペックを満たしつつ、今後の拡張性も考えDX-U2200としました。

踏切監視システム画面 踏切監視システム画面

AI画像解析をもう一歩先へ省人化や効率化にも活用したい

今回の踏切監視システムは異常を検知し事故の危険があると判断した場合、信号機を変えて列車を止める、というところまで踏み込んでいます。そのため、誤検知や誤作動で度々列車が止まってしまうような事態を招くわけにはいきません。現在、名古屋鉄道の踏切9か所で稼働していますが、これまで目立ったトラブルはなく、評価キットでのテスト以上に安定しているという実感があります。
今後はまず目標の設置数を達成することに注力していきますが、将来的には画像解析の強みを活かし、人力による踏切点検回数を削減や、省人化に役立てることも視野に入れています。さらに時間ごとの踏切交通量を計測し、そのデータを分析することでより安全で安定した列車運行に役立てることもできると考えています。機能が増えてくるとまた新たにエッジAIコンピュータの選定が必要になるかもしれませんので、今後コンテックのラインナップがさらに充実することを期待しています。

導入のポイント

課題

社会の重要なインフラである鉄道を安定運行するために不可欠な踏切の保全。大小合わせ多くの踏切を持つ名古屋鉄道では、踏切そのものに加え、周辺の線路の安全を確保するため、地域にあった仕組みの導入を模索していました。

成果

カメラ導入を契機にAIによる画像解析で異常を検知し、運転指令や信号機とも連携した踏切監視システムを開発。システム構成の要となるJetson搭載エッジAIコンピュータにDX-U2200を採用し、安全支援装置として、より多くの踏切の安全性向上に寄与することができるようになりました。

お客さまプロフィール

名鉄EIエンジニア株式会社
鉄道事業部 みらい創造担当 係長 杉浦 淳氏
通信課の一員として長年踏切監視システム・無人駅監視システムなどの遠隔監視システム開発に従事。その経験を活かし、AIの画像解析による踏切監視システム開発に携わる。現在は「みらい創造担当」として交通インフラの未来を拓くべく、新たな技術を活用した仕組みをグループ以外の鉄道会社にも積極的に拡大していく役割を担っている。

名鉄EIエンジニア株式会社 鉄道事業部 みらい創造担当 係長 杉浦 淳氏

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