アナログ計測技術におけるサンプリングやノイズ除去の現場知識


アナログ信号計測では、計測する信号の周波数に応じたアナログ入力インターフェイスの選択やその周辺のアクセサリの選択が重要です。ケーブルやバッファアンプ等アクセサリは正しく信号を取得するためにも慎重に検討しなければなりません。

目次

サンプリングレートは測定対象周波数の10倍以上

サンプリングレートとは

サンプリングレートとは、アナログ信号の連続したデータを、コンピュータに取り込むために一定時間毎に標本化(サンプリング)するときの周波数で、1秒間に何回サンプリングするかを示した数値です。

アナログ信号計測の際のサンプリングレート(周期)はどのように決めればいいのでしょうか。サンプリングレートが高速であるほど、元の信号波形を正確にデジタル信号に変換することができます。しかしながら、サンプリングレートが高速になるほどデータは増大し、アナログ入力インターフェイスに搭載されているA/Dコンバータは高価になります。

標本化定理(サンプリング定理)とは

現実的な指標を考える上で、まず考慮すべきなのが標本化定理(サンプリング定理)です。標本化定理とは、『連続的なアナログ信号を離散的なデジタル信号にサンプリングする場合、どの程度の間隔でサンプリングするかを示す定理です。元の信号に含まれる周波数成分をすべて正確にサンプリングするためには、元の信号の周波数の2倍以上のサンプリングレートが必要』というものです。

たとえば、1kHzのアナログ信号を正確にサンプリングするためには、最低でも2kHz以上の周期でサンプリングしなければ、元の信号に含まれる周波数成分を正確にサンプリングすることはできません。高速な信号を低速にサンプリングすると、折り返し信号となって観測され、元の測定対象の波形の周波数より低い周波数の信号波形に見える、エイリアシングが発生します。

サンプリングの定理のイメージ

エイリアシングとは

エイリアシングは日常生活でも観察されます。高速回転しているはずのプロペラの回転が遅く見えたりするのは、回転しているプロペラの周波数に対して、人間の目と脳のサンプリングレートが追いついていないためです。エイリアシングが発生すると、サンプリング結果は実際の信号の周波数と大きく異なって見えることになります。

適切なサンプリングレートとアナログ入力インターフェイス

標本化定理を踏まえることで、周波数成分については正確に取得できますが、実際には元の信号の2倍程度では、波形はギザギザに見え、振幅の取得も不十分です。信号特性を正確に捉えるための実用的なサンプリングレートは、元の信号の10倍以上が望まれるでしょう。コンテックでは各周波数に応じてアナログ入力インターフェイスを用意しています。

同じタイミングのデータを取得するには

アナログ入力インターフェイスで複数の信号を計測するとき、計測された全てのチャネルの信号は同じタイミングでサンプリングされた信号になるでしょうか。A/Dコンバータをチャネル数分搭載しているアナログ入力インターフェイスなら、すべてのチャネルのアナログ信号を同期して、同じタイミングでサンプリングが可能です。

マルチプレクサでチャネルを切り替えて1つのA/Dコンバータでサンプリングするマルチプレクサタイプでは、チャネル数によって1チャネル当たりのサンプリング周期が伸びると共に、チャネル間でサンプリングするタイミングにズレが発生してしまいます。

同時サンプリングタイプ マルチプレクサタイプ

マルチプレクサ方式のアナログ入力インターフェイスでも、時間のズレをなくせるのが、同時サンプリング機能増設アクセサリです。ATSS-16AはアナログEシリーズからの制御信号のタイミングで、16チャネル同時にアナログ入力信号をホールドすると、時間差のない同じタイミングのデータを取得できます。

アナログ計測におけるノイズの種類

ノイズとは

ノイズとは音声における雑音のことですが、計測の分野では音声に限らず、信号に含まれる計測対象以外の成分のことをいいます。ノイズには大きく分けて、次の2種類が存在します。電気実験とは異なり、現場にはさまざまなノイズが存在するため、理論どおりにいかないケースが多々あります。このような場合、精度を狂わせる原因の多くがノイズに起因しています。

外来ノイズ

  • 信号伝送ライン外部からの空中伝搬による飛来ノイズ
  • モータなどの動力系機器配線との混在、近辺を経由する配線から混入するノイズ

内部ノイズ

  • 信号線間のクロストーク
  • マルチプレクサ切り替えに起因するクロストーク
  • グランドループ(アースループ)による影響

ハードウェアによるノイズ対策

ノイズ対策には、平均化処理といったソフトウェア的な対策もありますが、ケーブルやアクセサリによりハードウェア的な対策を施すことができます。

飛来ノイズの除去

飛来ノイズの除去には、アナログ入力インターフェイスと測定対象の間をシールドケーブルで接続することが有効です。シールドは接地により効果を発揮します。シールドケーブルはPCのフレームを通して接地されますので、PCの電源でアースをとることで有効になります。

クロストークの対策

クロストークとは

信号線が互いに干渉してノイズ源になる現象をクロストークといいます。クロストークの代表例としては、かつてのアナログ有線電話で平行するケーブル間の電話が互いに聞こえる漏話があります。計測の分野では音声に限らず、計測対象以外の隣の信号の成分を取得してしまう現象のことを指します。

信号線間のクロストークの除去

クロストークの対策としては、ツイストペアケーブルを使用することが有効です。コンテックのシールドケーブルPCB37PSでは信号線とGNDが、PCB96PSでは差動ペア間がツイストペアになっています。また、各信号線を同軸ケーブルにしたPCC16PS、PCD8PSもあります。

マルチプレクサ切り替えによるクロストークの除去

アナログ入力インターフェイス内のマルチプレクサの切り換えによって、信号源の波形に影響が発生します。これは、信号源の出力インピーダンスを通したマルチプレクサの寄生容量への充放電に伴う現象です。信号源の出力インピーダンスが高い場合、信号源の出力電圧が本来測定したい電圧に戻るまでに時間がかかります(セトリング時間と呼ばれます)。

アナログ入力インターフェイスの入力回路イメージ

セトリング時間は、信号源の出力インピーダンスによって異なります。出力インピーダンスの低い信号源Aと出力インピーダンスの高い信号源Bの2チャネルのサンプリングを行った場合の例を示します。

マルチプレクサ切り替えによる影響の対策としては、信号源の出力インピーダンスを下げることが有効です。具体的には、信号線をできるだけ短くしましょう。信号線を短くできない場合や出力インピーダンスの高い対象を計測する場合、高速高精度のオペアンプを採用した高入力インピーダンスのバッファアンプの接続により影響を除去できます。

グランドループ (アースループ)によるノイズの対策

グランドループ (アースループ)とは

グランドループ (アースループ)とは、グランドの配線がループ状になっていること。複数の機器を接続する際に信号の各グランド(GND)に電位差があると、グランドやアースを通してループ状に電流が流れてしまいます。グランドループに電流が流れると、その経路のインピーダンスによって電圧が発生し測定誤差(ノイズ)として現れます。

シングルエンド入力 (コモンモード) はチャネル数が多い場合に有用ですが、グランドループがあるとその影響を受けてしまいます。一方、差動入力 (ディファレンシャルモード) ではシングルエンド入力の半分のチャネル数になりますが、グランドループによる誤差を除去できます。

グランドループによるノイズの発生例と対策

シングルエンド入力
AI_00の測定電圧 = Va + ΔV
AI_01の測定電圧 = Vb - ΔV
シングルエンド入力では、グランドループに流れる電流によってΔV分の測定誤差が生じます。

差動入力
AI_00の測定電圧 = (Va + ΔV) – ΔV = Va
AI_01の測定電圧 = (Vb – ΔV) – (-ΔV) = Vb
差動入力では、正極(AI_00[+])端子と負極(AI_00[-])端子間の電圧を計測でき、グランドループによる誤差を除去できます。

グランドループによる誤差の対策には、差動入力が有効です。アースを通したグランドループが疑われる場合は、アースを通したグランドループを切るためにバス絶縁タイプを試すことも有効でしょう。

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