運転シミュレータは、模擬車両の運転台に設置される運転機器と、綿密な物理計算に基づき限りなく実車に近い操作環境を再現する制御計算機システム、そして臨場感あふれる映像表示装置・音響機器から構成されます。
リアル感を出すために、運転機器は実際の車両に搭載されているハンドルやペダル、速度計・圧力計などの計器類、表示器類を用います。これらの機器は安全性、信頼性を重視した「鉄道規格」に準拠したもの。1本1本の電線が太く頑丈で本数も多く、運転台と制御計算機をつなぐ配線は複雑になります。
また、これらの信号を制御計算機にアナログ入出力・デジタル入出力としてつなぎ込む必要があります。科学的、物理的な理論に基づき、車両性能から勾配・曲線・走行抵抗に至るまで、車両挙動に変化を与える諸要素を正確にシミュレートするために、制御計算機には高い演算能力・描画能力が要求されます。このため、計算機性能を優先することにより、入出力インターフェイスに対する拡張スロットなどが制約される場合があります。
2008年末に設計に入ったシステムでは、拡張スロットを使えない仕様であったために対策を検討した結果、コンテックの「F&eIT(ファクトリー アンド イー・アイティー)システム」の採用を決定しました。
F&eITシステムは、イーサネットベースの省配線・リモートI/O(Input/Output)システムで、模擬車両の運転機器からの入出力信号をいったん、超小型の入出力デバイスで受けて、超小型CPUモジュールでイーサネット信号に変換します。これにより、運転機器の入出力信号すべてを1本のイーサネットケーブルで制御計算機に渡すことができます。また、模擬車両が走行に伴って揺れ動く動揺機構を付加する場合も、ケーブルの扱いが簡素化され、設置が非常に簡単になります。
2009年からF&eITシステムを採用した運転シミュレータの納入を開始。すでに11システム(7月現在)が稼働しており、そのうち2システムを「鉄道博物館」に設置しています。