運転士と車掌の連携訓練が可能なシミュレータシステム。実際の業務に準じて、同時に訓練することも、個別に訓練することもできる
鉄道ゲームソフトを出発点に 本物と同じ運転シミュレータへ
音楽館は、1980年代のミュージックシーンで活躍したフュージョンバンド「カシオペア」のキーボード奏者・向谷実氏が起業した会社。当初は音楽活動と連動したスタジオ機材のリース業がメインだったが、シンセサイザーの演奏
を通じてデジタル技術の知識を深め、その後、CD-ROMの音楽ソフトや鉄道シミュレーションゲーム「Train Simulator」なども開発した。なかでも、コアな鉄道ファンとしても知られる向谷氏のこだわりが存分に発揮された「TrainSimulator」は、実際に運転しているかのような
体感が受けて大ヒット。この反響を契機に、鉄道運転シミュレータ開発への道を切り開いた。
2006年、ハイビジョン映像を駆使した大型シミュレータを大手私鉄会社の教習所に納入設置したのを皮切りに、鉄道博物館や記念イベント、職業体験型テーマパークなどに続々と鉄道シミュレータの採用が決まった。すると、CG映像ではないハイビジョンの実写映像と、リアルな音響による臨場感が高い評価を得て、鉄道会社各社の注目も集めた。
コンテックのF&eITシリーズは、鉄道博物館のシミュレータから採用され、以来、展示用から教習用へと進化し続ける運転シミュレータの高度なシステムを裏側で支えている。
運転士と車掌の連携訓練が可能なシミュレータシステムの構成イメージ図
システム構成イメージ

FA向けに作られたF&eITシリーズ 信頼性と経済性が強み
2007年、(財)東日本鉄道文化財団が運営する鉄道博物館がさいたま市に開館。オープン当初から人気を博し、旧交通博物館より移設された4系統の各運転シミュレータには長蛇の列ができた。2009年には京浜東北線209系と東海道線211系が音楽館によってリニューアル、2018年にはE5系新幹線及びE233系のシミュレータが新設され、コンテックのF&eITシリーズが採用された。
運転シミュレータは、運転台の運転操作機器、それと一体になった映像モニターと音響スピーカ、実車と同じ操作環境を忠実に再現する制御計算機でシステムが構築されている。
近年、音楽館がメインで提供する鉄道会社への訓練用シミュレータにあっては、運転操作に合わせ、本物とまったく変わらない挙動や反応、表示などが忠実に再現されている。それには、大量の動作データをアナログ・デジタル両方の入出力信号に変換する必要がある。
コンテックのF&eITはイーサネットベースの省配線・リモートI/Oシステムであり、運転操作側からの入出力信号を超小型入出力デバイスで受け、超小型CPUモジュールでイーサネット信号に変換、制御と監視を行うシステムとして安定稼働に貢献している。また同時に、運転操作側と計算機側をケーブル1本で接続することで省配線・省スペース化も実現している。
オリジナルの鉄道シミュレータ技術 その革新と進化を自ら更新していく
ハイビジョン実写映像とリアル音響という誰もやっていなかったオリジナルのフォーマットで本物を徹底的に追求してきた音楽館の鉄道シミュレータ。そのクオリティの高さと実績の豊富さに、国内の主要な鉄道会社はもちろん、海外の鉄道会社からのオファーも相次いだ。
2016年には、大手鉄道会社から全乗務員区80ヶ所以上の業務用シミュレータを受注。
現在、運転士だけでなく、車掌も同時に業務を連携して訓練できる独自に開発したシミュレータシステムを順次、納品している。
映像や音響の臨場感だけでなく、加速や減速、制動の各操作に応じた乱れのない映像と音響のリンク、走行時の信号表示や天候の設定、さらには計器類の針の動きなど、実際の動きをリアルに再現。鉄道の現場で働くプロの方々が称賛する、他に類を見ない細部にわたる創意工夫は、完璧なシミュレータをめざす音楽館ならではの高度な技術力と言っていい。
今後は、設置場所を限定しない小型で省力化されたシミュレータシステムをどう構築していくか、音楽館のさらなる取り組みは現在進行形で続いている。
コンテックは、お客様の進化に伴うさまざまな課題解決に、IoTの技術力を活用し継続的なご提案を通じて、共に汗を流すパートナーであり続ける。
導入のポイント
課題
機器・計器類は本物と同じ鉄道規格に準拠したものを使用するため、配線数が多く複雑になる。また、リアル感を出すために高速の計算処理が必要になり、可能な限り機器・計器類との入出力インターフェースにかかる負荷を減らす方法を検討していた。
成果
F&eITシステムの採用により、現場と同じ正確性が求められるシミュレータに、リアルな応答性と安定した作動を確保すると同時に、装置側と計算機側をつなぐ複雑な配線を簡素化する省配線・省スペースを実現。展示用から訓練用への高度な進化にも対応している。
お客さまプロフィール
- 株式会社音楽館 代表取締役
向谷 実様
- 鉄道シミュレータの事業では、企画立案・撮影・取材・編集・シナリオ・デザイン・プログラム・設計・設置工事までを一貫して行い、実写映像に加え、とくに臨場感を増す走行音や通過音にも徹底してこだわっています。最近では本物を一番理解している現場で実際に働いている方々に訓練用として使っていただく機会が増え、納品後の説明会の際などに歓声を上げて認めていただけると、制作者冥利に尽きます。訓練の成果が現われていると言われたら、鉄道の安全運行に貢献した勲章をいただいたようにうれしいですね。
F&eITシステムは、シミュレータを縁の下の力持ち的な存在として活躍している専用の機材。信頼性も経済性も高く、安定した性能と耐久性にも優れていて、本当に満足しています。
- 株式会社音楽館
- (株)音楽館殿(本社:東京都世田谷区)、東京都世田谷区で創業。現在は品川区西五反田に本社を置く。社名は「ミュージック・スタジオ」をイメージして名づけられた。音楽活動と同様に、つねにクリエイティブでありたいとの想いから、鉄道の事業がメインになった今も社名はそのまま。鉄道各社の発車メロディを手がけたり、コンサート活動も行っています。
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