食品衛生法改正の内容とAI技術の活用による衛生管理の方法を解説

改正食品衛生法の2020年6月1日施行に伴い、食品等事業者はHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理に対応する必要があります。今回は、食品衛生法改正の内容、特にHACCP衛生管理の内容と食品業界の衛生管理の難しさ、AI技術を利用した衛生管理の方法について解説します。

目次

2020年6月1日に施行された改正食品衛生法の内容

2020年6月1日に施行された改正食品衛生法の中で、事業者に影響がある内容は以下の4点です。

  • HACCPに沿った衛生管理の制度化
  • 特定成分等を含む食品における健康被害情報の届出の義務化
  • 食品用器具・容器包装にポジティブリスト制度を導入
  • 輸出入食品の安全証明の充実

HACCPとは

HACCPとは、「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略で国際的に認められた衛生管理手法のことです。食品等事業者は、食中毒や異物混入等の危害要因を把握しなければなりません。また、危害要因を分析できるように全工程を管理し、危害要因を予防・除去・許容レベルに低減させて製品の安全性を確保します。

HACCPの実施には、組織全体で適切に実施することが求められます。下記の表はHACCP導入のための7原則12手順となります。手順1~5は原則1~7を実施するために必要な準備と考えられます。

手順 内容 説明
手順1 HACCPのチーム編成 製品を作るために必要な情報を集めるために、組織内の各部門から担当者を集めます。
手順2 製品説明書の作成 製品の原材料や特性等をまとめて危害要因分析の基礎資料を作成します。
手順3 意図する用途及び対象となる消費者の確認 用途は製品の使用方法(加熱の有無等)を、対象は製品を提供する消費者を明確にします。
手順4 製造工程一覧図の作成 材料受入から製品の出荷もしくは提供までの流れを工程ごとに書き出します。
手順5 製造工程一覧図の現場確認 実際の現場での人の動き、モノの動きを確認して必要に応じて製造工程図を修正します。
手順6【原則1】 危害要因分析の実施
(ハザード)
工程ごとに原材料由来や工程中に発生しうる危害要因を列挙し管理手段を明確にします。
手順7【原則2】 重要管理点(CCP)の決定 危害要因を除去もしくは低減すべき重要な工程を決定します。(加熱殺菌、金属探知等の加工/検査工程)。
手順8【原則3】 管理基準(CL)の設定 危害要因分析で特定したCCPを適切に管理するための基準を設定します。(温度、時間、速度、その他)
手順9【原則4】 モニタリング方法の設定 CCPが正しく管理されているかを適切な頻度で確認し、記録を行い管理します。
手順10【原則5】 改善措置の設定 モニタリングの結果、CLが逸脱していた時に講ずべき措置を設定します。
手順11【原則6】 検証方法の設定 HACCPプランに従って管理が行われているか、修正が必要かどうか検討します。
手順12【原則7】 記録と保存方法の設定 記録データはHACCP管理の証拠であると同時に、問題が生じた工程の原因追及のために活用できます。

HACCPの7原則を要件とした衛生管理を義務付けられている事業者は、と畜場・食鳥処理場など大規模な食品工場を有する事業者です。小規模事業者の場合も、HACCPの考えにもとづいた衛生管理が必要となります。小規模事業者は、業界団体が作成し厚生労働省が承認した業種別の「手引書」による衛生管理を行います。

毎年開催されるFOOMA JAPAN(国際食品工業展)では、HACCPに沿った衛生管理をサポートするシステムや食品加工用機器などが展示されています。食品機械に関する情報提供や、標準化・安全・衛生化の手段を知ることができます。

食の安全に関する事故事例

食の安全に関する事故は、毎年発生しています。例えば、2020年7月21日に山口県防府市内の飲食店、同年8月20日には栃木県のラーメン店で食中毒が発生しました。いずれも、原因は黄色ブドウ球菌で、保健所からは施設内外の清掃・消毒など衛生管理徹底の指導が入っています。

食の安全に関する事故を起こしてしまうと、被害者への補償や営業停止による損失など、事業に対する影響は計り知れません。このような事故を防止するためにも、HACCPの考え方にもとづいた衛生管理の徹底は重要なのです。

飲食店や食品工場が見直すべきこと

従業員への衛生管理教育

少子高齢化に伴い労働人口が減少しつつある現代、業務を行う従業員は多様化し、手洗い1つにしても衛生管理が難しくなっています。パートやアルバイトによる人材の流動化、文化的な背景の異なる外国人労働者の増加により、これまでのようなスポット的な教育、手順の口伝や貼紙による指導方法だけでは、なかなか衛生管理が浸透しません。

AI技術を駆使したシステムの導入

HACCPの衛生管理では、従来通り管理者や作業者による目視チェックを紙に記録するような手順も認められていますが、紙による管理は煩雑になりがちであることもありITを導入し重要管理点の記録作業を自動化することができれば、管理のための手間を省き業務効率の改善にもつながります。

最近では、目視チェックが必要な検査工程の不良品検査や、作業者の行動や作業手順の確認などもAI技術を応用してシステム化する流れが加速しています。

AI技術の実用化が可能な時代

これまでAI技術を利用するには、大量の学習データを用意して、高価なGPGPUボードを搭載したハイパフォーマンスサーバやクラウド型のAIサービスで学習、推論を行う大規模なシステムが必要になると思われていました。また大量のデータをやり取りするクラウドシステムや高価なサーバを各店舗で導入するにはコストが問題になります。
こうした問題を解決する方法として期待されているのがエッジコンピューティングです。予め学習させておいた推論をエッジAIコンピュータで実行判定させる実用的なシステムを構築することができます。
このようなエッジAIコンピュータを利用した衛生管理システムの一例として、株式会社コンテックの「AI技術を応用した手洗い判定システム」を紹介します。

AI技術を応用した手洗い判定システムで手洗い指導を徹底

AIエッジコンピュータ (飲食店、食品工場、医療現場など)衛生管理が必要な現場での正しい手洗いの実施記録が残すことが可能になり、95%以上の精度で正しい手洗いを認識できる。

株式会社コンテックでは、3Dカメラで撮影した映像から正しい手洗い手順をAIによって認識する「AI技術を応用した手洗い判定システム」を開発しました。2020年7月9日から共創フィールドパートナーの募集を開始しています。

システムでは、厚生労働省が推奨する「正しい手の洗い方6ステップ」を画像処理し、正しく手洗いができているのか、AIが判定します。例えば、左右の手、せっけんや消毒液のつけ方、流水による手の流し方など、95%以上の精度で手洗いの状況を確認・判定します。

モニタのガイダンスを見ながら手洗いができるため、洗い残しの有無なども確認でき衛生管理の徹底につながるでしょう。

手洗い判定システムは、アルバイトやパートの入れ替わりが激しく、手洗い指導に時間がかかって困っている飲食店や食品工場、正しい手洗い手順の指導が必要な教育現場や医療現場に適したソリューションです。詳しくは以下のページで説明していますので、ぜひご覧ください。

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