経産省の法令改正で絶縁性能の判断基準にI0r(Ior)を追加見込み。より正確な判定が可能に

三相モータやACサーボモータの劣化度合を定量的に捉える手法として、これまで経済産業省(以降経産省)が定める電気設備の技術基準で絶縁性能I0(漏洩電流)値を測定する手法がとられてきました。2021年春ごろに予定されている法令改正により、この絶縁性能の判断基準にI0r(Ior) 値を使うことができるようになる見込みです。この法令改正が行われることで、I0r(Ior) 値による良否判定が公的に認められることになります。設備の保守作業における安全性の確保と省力化が期待されています。

本記事では、三相モータの絶縁劣化事象とリスク、Ior値を絶縁性能の判断基準に用いるメリット、絶縁劣化監視モジュールの特徴について解説します。

目次

三相モータの絶縁劣化事象とリスク

三相モータは、工作機械、配水ポンプ、昇降機など、多くの可動機械装置に使用されていますが、稼働時間に応じて内部の絶縁抵抗が低下します。絶縁抵抗が著しく低下すると、装置の故障を引き起こす危険な状態になります。 三相モータが故障する絶縁劣化事象リスクは、以下の3種類です。

  • 地絡
  • 相間短絡
  • レアショート

地絡(ちらく)

  • 地絡(ちらく)とは、電気回路と大地との間で絶縁が極端に低下して、その間がアークまたは導体により、つながっている状態のことです。地絡状態であると、感電災害や設備損傷の危険性が高まります。

相間短絡(そうかんたんらく)

相間短絡(そうかんたんらく)とは、2つまたは3つの相の線間が負荷を通さずに接触してしまった状態です。相間短絡が発生した場合、大きな電流が流れてモータの損傷や火災の危険性が高まります。

レアショート

レアショートとは、本来絶縁されているはずのコイルの導線部分が接触してしまった状態のことです。レアショートの状態になると、コイルの巻線数などが変化するので本来の性能が低下するとともに、異常加熱になる可能性もあります。

これらのリスクを検出するためには、モータ内部の絶縁状態を診断しなければならず、数ヵ月に1度設備を停止して、テスタにより絶縁抵抗を点検する必要がありました。

経産省法令改正により絶縁性能の判断基準にI0r(Ior)値追加

設備を停止せず、稼働中に絶縁劣化を計測する方法として、漏洩電流の計測があります。低圧電路の絶縁性能を測定するのに用いられている3種類の値を整理します。

    Ioとは

    Io(漏洩電流)は、電気回路で理論上は電流が流れない経路で流れる電流のことを言います。
    通常は絶縁されている電気機器も損傷や経年劣化によって配線や絶縁性能が下がると、絶縁体の表面や内部を通じて大地などに流れ出ることになります。 Ioは、Ior(対地絶縁抵抗漏洩電流)とIoc(浮遊容量成分漏洩電流)の合成成分から構成され、一般的には漏電遮断機や漏電検知器、漏電リレーなどで検出される漏れ電流です。

    Ioとは

    Iorとは

    Ior(対地絶縁抵抗漏洩電流)は漏洩電流の内、電気回路上の機器や電線の損傷、劣化など抵抗成分による流れ出る漏れ電流のことを言います。Iorによる漏れ電流は、感電事故や発熱による火災事故の原因となるので、定期点検や設備監視において管理できることが望まれます。

    Iocとは

    Ioc(浮遊容量成分漏洩電流)は漏洩電流の内、対地との静電容量分を通して常に流れている漏れ電流です。Iocによる漏れ電流は、感電や火災事故の原因にはなりませんが、インバータやサーボモータを利用した設備などでは、Iocの高周波電流が原因で設備の誤動作などのトラブルの原因になることもあります。

    IoCとは

I0r(ior)測定とは

今回、経産省の法改正対象となった法令は、「電気設備の技術基準の解釈の解説 第14条 低圧電路の絶縁性能」です。従来の第14条では、絶縁性能の判断基準としてはIo(=Ior+Ioc)しか認められていませんでした。

従来のIo値による判断では、発熱しない安全な漏洩電流であるIocが含まれていたため、本来危険のない正常な状態が、危険と判断されてしまう運用上の課題がありました。

現状の法令解釈:Io(=Ior+Ioc)で判定

特にモータの制御に必要となるインバータはIocが大きく、その影響から本来安全な状態であるにも関わらず危険な状態と検出されやすいことが、モータ内部の絶縁劣化の判断を難しくしていました。

それが、法令改正により絶縁性能の判断基準がIorとなれば、モータ内部の絶縁劣化の判断をより正確に行えるようになることが期待できます。

改正後の法令解釈:Iorのみで判定

しかしながら、その実現には一つ課題があります。実はそもそも、従来の計測方法では、稼働中はIorを計測することはできず、Io値しか計測できていなかったということです。

法改正と、稼働中にIorを計測できる新しい計測方法 の実現により、設備を稼働したままで、絶縁劣化を常時監視できる環境が整うことになります。

絶縁劣化監視モジュールの特徴とメリット

コンテックの絶縁劣化監視モジュールは、前述のリスクのうち、地絡(ちらく)を検出するモジュールです。
印可電圧、零相電流の同時測定と演算により、稼働中にIorを計測できる新しい計測方法を実現しており、従来は、設備を停止させなければ測定できなかった三相モータやACサーボモータの絶縁抵抗を稼働中に測定することが可能です。

絶縁劣化監視モジュールは、以下のように測定モジュールと ZCT(零相変流器)により構成されていて、手軽に設置可能です。絶縁劣化監視モジュールには次のような特徴があります。

絶縁劣化監視モジュールの構成

  • 特許技術(Medes-IO®)を採用し稼働中のモータ絶縁抵抗が測定可能
  • 漏洩電流Iorより絶縁抵抗を算出
  • 電源回路だけでなくインバータの2次側での絶縁抵抗が測定可能
  • ハードおよびソフト的なノイズ対策により高精度な測定を実現
  • CONPROSYSに複数のモジュールをスタックすることで複数のモータの絶縁測定が可能

コンテックのCPS-MM-LCとM2Mコントローラで常時監視

コンテックでは、CONPROSYSシリーズのIoTソリューションとして「三相モータの故障予兆検知」を提供しています。メインとなるモジュールは、絶縁劣化監視モジュールのCPS-MM-LCです。

CPS-MM-LCモジュールは、CONPROSYSシリーズのスタックタイプ・CPUモジュールに増設して使用することで簡単にIorを計測することが可能になります。また、CONPROSYSクラウドデータサービス(CDS2)にデータを送信することで、遠隔地に点在する設備のモータの状態を長期間に絶縁不良や設備故障の予知を実現することができます。

設備稼働中の絶縁劣化監視には、ぜひ CONPROSYSシリーズの絶縁劣化監視モジュールと、クラウドデータサービスから成るソリューションの導入をご検討ください。

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