製品の製造では、電気機器や工作機械などを利用します。そのため、万が一の事故や故障などに備えた安全対策が必要です。安全対策を実施するには、国際規格のほか各国が定める法令の遵守が重要となります。本コラムではISOやIECなどで規定される国際規格を中心に、安全規格の概要を説明します。
目次
安全規格の体系
安全規格は、世界共通の国際規格を頂点として、4つの階層に分類可能です。各規格は、より上位の規格と協調することで内容の統一が図られています。以下の図は、安全規格の4階層を図式化したものです。

国際規格
国際規格とは、世界各国が共通して利用できる規格です。代表的な国際標準化機関には、以下のようなものがあります。
- ISO(国際標準化機構)
- IEC(国際電気標準会議)
- ITU(国際電気通信連合)など
近年は、国家規格などの制定・改訂において、国際規格との整合性を持つことが義務付けられています。
地域規格
特定の地域内で利用できる規格です。 EU加盟国が適用するEN規格は、地域規格に属します。 標準化機関の例は、EN規格(電気・通信分野を除く)を制定しているCEN(欧州標準化委員会)や、電気・通信分野のEN規格のCENELEC(欧州電気標準化委員会)などです。
国家規格
国内で使う規格です。例えば、日本の JIS規格(日本工業規格)は国家規格に属します。 標準化機関の例は、JIS規格を審議するJISC(日本工業標準調査会)や、ANSI(米国規格協会)、BSI(英国規格協会)などです。
団体規格
特定の業界団体などで使う標準です。団体規格には、省庁や業界、会社、工場の水準で決められて使われる規格が含まれます。 一般的に、特定の業界で定められている規格は「団体規格」、会社内の規格は「社内規格」と呼ばれます。
国際規格(ISO、IEC、ITU)
国際標準化機関は、国際的に適用される規格を制定する組織で国際的な取り決めによって設立されています。具体的には、ISO・ITU・IECなどです。
「国際標準化機関」の解説
国際標準化機関:国際的に適用される規格を制定する組織で、国際的な取り決めによって設立され、国・地域による制限なく参加可能。ISO・ITU・IECなどがある。
ここからは、各規格の概要やISO/IECガイド51と国際規格の体系について解説します。
ISO規格
ISO規格とは、1947年に国際標準化機構(International Organization for Standardization、以降ISO)で制定された国際規格であり、1926年に設立されたISAが改組されたものです。
ISOは、非政府間国際機関で各国の標準化機関が参加しています。日本の参加標準化機関は、JISを制定しているJISCです。
ISOでは、電気・電子分野に始まりあらゆる産業分野(電気通信分野を除く)について、国際的な標準化を行っています。ISO規格の規格番号は「ISO」で始まり、続いて番号、発行年が付記される形式です。
IEC規格
IEC規格とは、1906年国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission、以降IEC)で制定された国際規格です。紹介する国際規格の中では、最も歴史があります。IECもISOと同じく非政府間国際機関で、日本からはISOと同様にJISCが参加しています。
IECでは、電気・電子分野(電気通信分野を除く)について、国際的な標準化を行っています。IEC規格の規格番号は「IEC」で始まり、以降の採番ルールはISOと同様です。
ITU-T勧告
ITU(International Telecommunication Union)とは、情報通信に関する国際標準の策定などを行う国際機関です。ITUは、以下のようにいくつかの部局に分かれています。
- ITU-T(電気通信標準化部門)
- ITU-R(無線通信部門)
- ITU-D(電気通信開発部門)
ITU-T勧告とは、ITU-Tが策定した有線電気通信技術の技術標準です。ITU-T勧告は、A~Zシリーズまでの技術領域に分類され、特にGシリーズ(通信回線の伝送システムや伝送媒体などの技術標準)などはよく知られています。
ISO/IECガイド51と国際規格の体系
国際規格は、電気関連のIEC規格と電気以外(機械、管理など)のISO規格から構成されています。ISO/IECガイド51(Safety aspects-Guidelines for their inclusion in standards)とは、安全規格を策定する際の基準となるガイドラインです。同ガイドラインでは、安全の定義が規定されており、定められた要求事項を製品に適用することで、各国の技術基準に整合させることができます。
各規格は、独立したものではなく体系化されているのが特徴です。組み合わせて実施すればより一層安全を守れるでしょう。大きく以下の3つに分けることができます。
- 基本安全規格(A規格)
- グループ安全規格(B規格)
- 製品安全規格(C規格)
以下は、ISO/IECガイド51とISO・IECの関係性とA規格・B規格・C規格の関係を図式化したものです。

このように、基本の安全規格から個別の機械に対する安全規格を組み合わせることで、より漏れのない安全を確保できます。
国家規格・地域規格
安全規格は、地域別や国家別に安全規格が規定されています。そのため、装置の製造時に部品のすべての評価や確認は、多くの手間と時間が必要です。定められた規格ごとに認定を取得した製品には、規格認定マークを使用できます。ここでは、コンテックの製品が認定を受けている代表的な安全規格について、順番に解説します。
電気用品安全法(日本)
電気用品による危険や障害の発生を防止する目的で制定された法律です。本法律によって、電気用品の製造や販売など規制し、電気用品の安全性確保について、企業の自主的な活動を促進するように定められています。電気用品の分類は、以下の2つです。
認定マークも以下のように異なります。
特定電気用品とは、構造や使用方法などによって危険が生じる可能性の高い電気用品のことです。具体的には、以下の3つのような電気用品は特定電気用品に分類されます。
- 長時間無監視で使用するもの
- 社会的弱者が使用するもの
- 直接人体に触れて使用するもの
UL規格(アメリカ合衆国)
UL規格とは、アメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories Inc.以降 UL)が策定する製品安全規格です。UL規格では、材料・装置・部品類や最終製品について、機能および安全性の標準化を行っています。UL規格の認証制度は、Listing認証とRecognition認証の2種類です。
UL規格の認証取得は必須ではありません。ただし、アメリカの各州単位ではUL認証を義務付けているケースも多いため、アメリカの電気製品の多くはUL認証を取得しています。
CSA規格, C-UL規格/(カナダ)
CSA規格とは、カナダ規格協会(Canadian Standards Association、以降CSA)が定めた、カナダにおける電気製品・医療機器などに対する安全規格です。CSAのグループ組織「The Canadian Standard Association」が規格作成を担当し、CSAが認証業務を行っています。
アメリカとカナダ、国際相互承認(MRA)を締結しています。そのため、総合認証が可能です。左記マークのうち、上段2種類はCSA NRTLマーク(CSA認証品)で、CSAにより試験・認証を受けたUL適合製品であることを示します。下段2種類はC-ULマーク(C-UL認証品)で、ULにより試験・認証を受けたCSA適合製品です。
CEマーキング(EU加盟国)
CEマーキングとは、EU加盟国で販売される指定の製品に対し、EUの定めた分野別のEU指令や規則に定められる必須要求事項(Essential Requirements)に適合していることを示すマークです。本マークを付与した製品は、EU域内の自由な販売・流通が保証されます。
必須要求事項の多くは、製品の安全性に関するものです。しかし、昨今RoHS指令(ローズ指令)などで定められている製品の環境性能基準への適合を、CEマーキングで宣言するよう要求されるようになってきました。
UKCAマーク
UKCA マークとは、EUを離脱した英国で新たに導入された製品の基準適合マークです。CEマークからの移行期間終了後の 2021年1月1日から、英国(イングランド、ウェールズ、スコットランド)の製品に使用されています。ただし、北アイルランドは、UKCA マークの対象外で、CE マークあるいは新たに導入される UK(NI)マークが必要です。
CCC認定マーク
CCC認証とは、中国国内の製品安全に対する強制認証制度を指します。CCC認証の管理機関は、以下の2つです。
- 中国国家質量監督検験検疫総局(AQSIQ)
- 中国国家認証認可監督管理委員会(CNCA)
最終製品自体は対象外でも、部品が強制品目の場合は、製品自体が強制品目扱いとなります。
KC認定マーク
KC認定マーク(Korea Certification Mark)とは、韓国の国家統合認証マークです。本マークの認証は、技術標準院が指定する認証機関が行い、対象製品は必ず安全性を確認し本マークを表示することが義務付けられています。電磁波を発する電気用品や放送通信機器の電磁波適合性(EMC)は、国立電波研究所(RRA)が管轄です。
RoHS指令
RoHS指令(ローズ指令)とは、電気・電子機器における特定有害物質の使用制限に関する2011年6月8日付け欧州議会・理事会指令のことです(Directive on the Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electrical Equipment)。
本指令では、環境や人体に有害な化学物質が自然環境を汚染しないように、電気・電子機器の製造段階で使用を制限することを目的に制定されました。本指令の対象は、11分類のすべての電気・電子機器で、交流1,000ボルト以下、直流1,500ボルト以下の製品です。
また、RoHS2よりCEマーキングが義務づけられていますが、他のEU指令(低電圧指令、機械指令、EMC指令等 複数あり)にて、既にCEマークを表示している場合は、自動的にRoHS2適合と見なされるため、CEマークを貼付している製品が最新の各種指令に則しているかという点には十分に留意することが必要です。
なお、RoHSマークは自己宣言で規定マークなく、メーカーによっては、独自にマークを考案して適合有無を表示しています。当社は適合品に上記のマークを表示する運用としています。
技適マーク
技適マークとは、電波法令の技術基準に適合している無線機を証明するマークです。技適マークのある無線機の免許を申請する場合、手続きが大幅に簡略化されます。さらに、家庭で使用する無線LANやコードレス電話も、技適マークがあれば無線局の免許を受ける必要がありません。
安全規格に準拠したコンテックの製品
コンテックは、ここまで説明した安全規格に準拠した製品を多数取りそろえています。その中でも、世界各国の規格をクリアしたおすすめ製品として、GPC-700シリーズ・グローバル対応の無線LANユニットをご紹介します。
21種類の海外安全規格に対応したFAコンピュータ(GPC-700シリーズ)
「GPC-700」シリーズは、幅広い国へのグローバル展開を支援するFAコンピュータです。アフリカ、アジア、ヨーロッパ、日本、中東、北米、オセアニア、中南米の各安全規格に対応しており、仕向国に応じたACケーブルを選ぶこともできます。
グローバル対応の無線LANユニット
「FLEXLAN FX3000」シリーズは、多くの国の規格に対応した無線LANユニットです。本製品は、以下の2種類をご提供しています。
無線LANユニット2種
- 組み込みボードタイプ FXE3000
- 樹脂ケースタイプ FXA3000
また、型式によって対応国は異なります。欧米やアジアを幅広くカバーしているため、グローバルに活躍する企業様などにおすすめの製品です。
該非証明書発行手続きについて
機器の輸出に関しては、安全保障貿易管理における輸出許可を受けるため、輸出・提供する貨物・技術がリスト規制に該当するか否かを判定した該非証明書が必要です。コンテックでは、サポートとして該非証明書発行手続きをこちらよりお申し込みいただけますのでご活用ください。
安全規格に関するまとめ
本記事では、製品の製造で必要な安全規格について解説しました。輸出の際には、海外安全規格に適合した製品を開発・設計・製造することが必要不可欠です。
コンテックでは、各国の安全規格の取得や非該当証明書の発行など安心・安全な製品の提供を行っていますので、ぜひご活用ください。
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