ソフトウェアPLCとラズパイで実現する産業用途の自動化とは?
~コスト効率と柔軟性を兼ね備えた最新ソリューションをご紹介~

本技術コラムでは、2024年9月27日に開催しました、
 【工場自動化】使い慣れたRaspberry Piを産業PLCで活用する方法とは
 ~CODESYS搭載のラズパイベースの産業向けオールインワンPLCで、柔軟性とコスト削減を実現する~

というセミナーの講演内容のポイントについてご紹介します。

目次

ラズパイとソフトウェアPLCを組み合わせた、産業用途の新たな可能性

最初に、産業用途におけるRaspberry Pi (ラズパイ) とソフトウェアPLCの活用について解説します。

当社が紹介するこのソリューションは、使い慣れているRaspberry Piを活用して、工場自動化を目指すものです。
Raspberry Piは元々教育目的で開発されたコンピュータですが、その安価さと柔軟性により、今では産業用としても利用されている実績があります。 そこで当社では、このRaspberry PiをベースにしたオールインワンPLCを新たに開発し、産業用途に適した高信頼性と長期安定供給を実現しました。


Raspberry Piとは

次にRaspberry Piの基本的な特徴と、その活用方法について説明します。
Raspberry Piはシンプルな構成と扱いやすさが特徴で、運用コストを抑えつつ標準のOS (Raspberry Pi OS) を活用できる点が評価されています。 また、PythonやNode-REDといったプログラミング環境も豊富で、オープンソースであることから技術習得がしやすく、情報も豊富に提供されています。 さらに、産業用途で必要になる拡張も容易であり、具体的には「HAT」と呼ばれる拡張ボードを用いることで、さまざまな機能を追加可能です。
当社もHAT対応の拡張ボードを提供しており、より柔軟に自動化システムを構築できるようになっています。

Raspberry Piの組み込み用途向け「Compute Module」シリーズは、Raspberry PiのCPUとメモリ、ストレージ部分を基板に搭載したものです。 ここに必要なインターフェイスを加えることで産業用としての運用を可能にしています。 このように、Raspberry Piの多様なモデルが産業のニーズに応える形で発展してきました。

加えて、Raspberry PiにソフトウェアPLCを組み合わせることで、コスト効率の高さと柔軟性のある工場自動化を実現できます。

CODESYSが支えるソフトウェアPLCの進化とIoT化

CODESYSはドイツのCODESYS社が開発したソフトウェアPLCで、インダストリー4.0やIoTの進展に大きく貢献しています。 まず、PLC (プログラマブルロジックコントローラ) は、従来から工場の自動化やロボット制御などで広く使用されている制御装置です。 しかし、従来のPLCは特定のメーカがハードウェアとソフトウェアを一体で提供していたため、異なるメーカ間での移植が難しいものでした。 このなかでCODESYSは、独立したソフトウェアとして提供されており、WindowsやLinuxなどを搭載した産業用コンピュータにインストールすることができ、さまざまなハードウェアで使用することができます。


CODESYSの特徴

CODESYSの大きな特徴の一つは、無償の統合開発環境を提供している点です。この開発環境では、制御ロジックやフィールドバスI/Oの開発がシームレスに行え、デバイス間での互換性が確保されています。 これにより、Windows上で動作するプログラムがLinux上でも問題なく実行可能です。 CODESYSは世界で400社以上の企業によって採用されており、多くの製品に搭載されているため、ノウハウやプログラムも活用できる環境が整っています。

最近では、Raspberry Pi上で動作する体験用アプリケーションも提供されており、容易に試すことが可能です。 また、CODESYSにはWebブラウザでモニタリング画面を表示するWebサーバ機能が備わっており、ビジュアル化も簡単に実現できます。 これにより、ユーザーはWeb上で遠隔から装置の状態を監視・管理でき、IoT化のニーズにも応えています。

CODESYSの開発環境は、国際標準規格であるIEC 61131-3に準拠した5つのプログラミング言語+オリジナル言語の6つプログラム言語 (LD、SFC、FBD、ST、IL、CFC) をサポートしています。このため、異なるメーカ間でのプログラムの移植が容易であり、 複数の言語を組み合わせることで各言語の得意分野を活かした開発が可能です。 また、CODESYSにはシミュレーション機能が搭載されているため、デバイスが接続されていなくてもプログラムの動作確認ができ、効率的なデバッグが行えます。

この統合開発環境は、MicrosoftのVisual Studioに近いインターフェイスで操作しやすく、新規プロジェクトの作成からI/Oの設定、プログラム作成、デバッグ、ビジュアライゼーションの作成、デプロイに至るまで一貫して対応できます。 特に、ビジュアル化機能は、HMI画面を簡単に構築でき、各種データをモニタリングするためのGUIを容易に実現できます。

CODESYSによるラズパイ互換コントローラのプログラミングと活用提案


コンテックのラズパイ互換コントローラ

当社は、ラズパイ互換のコントローラ「CPI-PS10CM4」と「CPI-MS10CM4」を発表しています。 CPI-PS10CM4はCODESYSがプレインストールされており、産業現場での即時利用を想定しています。 対してCPI-MS10CM4にはRaspberry Pi OSのみがプレインストールされ、既存のRaspberry Piユーザーに向けた柔軟な選択肢を提供しています。 この製品は、複数のHATサイズのボードを積み重ねることができ、デジタル入出力やアナログ入出力の機能を持たせることができます。 これにより、ユーザーは用途に応じて柔軟に構成を変更できる設計となっています。
CODESYSには「Standard S」というライセンスがあらかじめ搭載され、最大で512のI/Oチャネルが利用可能です。さらに、必要に応じてCODESYSストアからモーションコントロール機能を追加することも可能です。

当社が提供しているHAT対応の拡張ボードには、デジタルI/OやアナログI/O、カウンタ機能を持つラインアップがあり、これらはRaspberry Piに直接接続して使用できます。 HATサイズ拡張ボードは最大8枚までスタック可能で、柔軟な拡張が可能です。

また、CODESYSはModbus-TCPをサポートしており、リモートI/Oへの入出力にも対応可能です。 温度計測や電力測定器などのModbus通信対応のデバイスと容易に連携でき、産業環境でのデータ収集と管理を効率化します。

EtherNet/IPにも対応しており、他社製のPLCともデータリンクが可能になり、システム統合の際の利便性も向上しています。 これにより既存の設備環境に組み込みやすく、さまざまな用途に対応する柔軟な運用が可能となっています。

システムの実行速度については、当社のテストによれば、三菱電機のMELSEC-Qと同等の処理性能を発揮し、高いリアルタイム性を有していることが確認されています。 この性能により、安定した動作が求められる産業用途にも対応できると考えております。
ラズパイ互換コントローラは、オムロンや三菱のPLCと同様の性能が必要でありながらコスト面で難しいケースや、独自にコントローラを開発するのが非現実的なシーンでの利用を想定しています。

セミナーではセキュリティ対策についても詳細に取り上げられました。具体的には、当社のラズパイ互換コントローラは、ネットワーク内での不正アクセス防止のためにファイアウォールやエンドポイントの対策が推奨されています。 また、ネットワーク上の通信監視装置を利用して異常なデータ流れを検出し、未使用ポートの閉鎖、OSのアップデートなどの基本的な対策も重要です。これらにより、セキュリティリスクを軽減することができます。

以上のように、CODESYSを搭載した当社のラズパイ互換コントローラは、使いやすさと高い拡張性を兼ね備えています。 そのため、産業現場での効率向上やコスト削減を目指す企業にとって、手軽に導入可能な選択肢として、大いに活用が期待されます。

当社リモートI/O製品のご紹介~CONPROSYS nanoとIO-Linkマスタ~

最後に、当社のリモートI/O製品であるCONPROSYS nanoとIO-Linkマスタをご紹介します。


リモートI/O製品

CONPROSYS nanoは、柔軟な構成が可能なリモートI/O製品として注目を集めています。この製品は4スロットのカプラー形状をしており、デジタル入出力、アナログ入力出力など、必要に応じてモジュールを自由に組み合わせることが可能です。 これにより、Modbus-TCPによるリモートアクセスを用いて、手軽にリモートI/Oシステムを構築することができます。 また、この製品にはCODESYSソフトウェアPLCを内蔵したモデルも用意されており、一定のCPUパワーがあるものの、高負荷の処理には限界があります。 しかし、リモートで高速な応答が必要な用途には十分な性能を発揮し、ローカルでCODESYSプログラムを稼働させることができる点が特徴です。

次に、IO-LinkマスタのリモートI/O製品についてご紹介します。この製品はマルチプロトコルに対応しており、スイッチの切り替えによりEtherNet/IPやPROFINETなどの異なる通信プロトコルに対応可能です。 また、IP67準拠の防塵・防水性能を持ち、8チャネルのIO-Linkポートを搭載しています。 これにより、IO-Link対応のセンサやモータなどを簡単に接続し、拡張性を持たせることができます。 このようにして、さまざまな設備やセンサを効率よくネットワークに組み込むことができ、現場での柔軟な対応が可能となります。

CONPROSYS nanoとIO-Linkマスタは、産業現場において効率的なリモート管理を実現するための製品です。 リモートI/Oの重要性は、現代の製造業やインフラにおけるデジタル化と共にますます高まっており、当社の製品はその流れに即した最適なソリューションとして提供されています。

この機会に、当社のラズパイ互換コントローラやリモートI/O製品を導入し、業務効率化と生産性向上を目指していただければと思います。

製品情報ページ

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