2021/07/02
近年、地球温暖化対策として脱炭素社会への移行が大きな社会課題となっています。環境問題は10年に一度といわれる災害が多く発生するなど身近な生活環境に大きな影響を及ぼしています。これらの影響による被害を最小限に抑え、対策を検討するためにも環境モニタリングが重要になっており、IoTの活用をキーワードに各種環境センサからデータを取得・分析する動きが増えています。これらIoTを活用した環境モニタリングシステムの構築には、既存の環境センサからの情報収集だけでなく、新たなセンサの追加やデータの質向上といった課題の解決も必要となります。
今回の技術コラムでは、当社のIoTソリューション「CONPROSYS」を利用し、簡単に環境モニタリングシステムを構築して快適な職場環境を実現する方法を紹介します。
CONPROSYSを利用した環境モニタリングシステムでは次のような構成でシステムを構築しています。
図1:環境モニタリングのシステム構成
CONPROSYSは、IoT化に必要なデータを簡単に収集してデータに基づいた判断処理、遠隔地からでも見える化を行う事のできる情報端末です。今回の環境モニタリングを実現するには、「M2Mコントローラシリーズ」、「M2M Gatewayシリーズ」のどの機種でも可能ですが、M2MコントローラであるCPS-MC341-ADSC1-931を使用しています。
使用しているOMRON社製の環境センサ(形2JCIE-BU01)は、USBポートからの電源供給を行いUSB通信またはBluetooth通信により、周囲の環境計測を行う事ができます。
暑さ指数(WBGT : Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。現在では職場の労働環境の指針として有効性が認められており、国際基準としてISO7243にて規格化されています。日本でも日本工業規格において「WBGT指数に基づく作業者の熱ストレスの評価-暑熱環境」としてJIS Z 8504 に規定されています。
このWBGTは単純な気温とは異なり、温度と湿度、輻射熱(地面や建物、体から出る熱)、気流を総合的に評価した数値となっており、単位は気温と同じ摂氏度(°C)で示されます。
[WBGTの算出方法] 屋外:WBGT = 0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度 屋内:WBGT = 0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
WBGT値を知るにはWBGT温度計が正確ですが、環境省の熱中症予防サイトで滞在場所の情報を確認できます。また、気温と湿度が分かれば関係表(図2)を用いて簡易的に算出することが可能です。
図2:WBGT値と気温、相対湿度との関係表
WBGTは28°Cを超えると熱中症患者の発生率が急増することが知られています。日常生活に関する指針として、以下の表に示されるような指針が定められています。
熱中症におけるWBGTの日常性格に関する指針
真夏の気温が高い時でも、カラッとしていると快適でもジメジメしていると不快に感じることがあります。また、日本の梅雨のように気温が高く雨がシトシト降っている状況など非常に不快に感じてエアコンを使用したくなります。実際に身体に感じる暑さの程度は、気温だけでなく風や湿度なども関係しています。この体感温度を簡易的に数値化した指標を不快指数といいます。
この不快指数は、気温と湿度から以下の計算で求めることができます。 不快指数 = 0.81 × 温度 + 0.01 × 湿度(%) × (0.99 × 温度 - 14.3)+ 46.3
不快指数が70を超えると不快に感じる人が徐々に増え、75以上で半数の人が不快と感じ、80を超えるとほとんどの人が不快と感じるようになります。なお、体に感じる蒸し暑さは気温と湿度に加え風速等の条件によっても異なるため、不快指数は必ずしも体感とは一致しないこともあります。これを色分けした表にしたものが図3となります。
図3:不快指数の数値
不快指数と不快の程度について
不快指数を参考にしながら、気温と湿度のバランスしながら空調を行うことで、省エネルギーで快適な職場環境を実現することができます。
厚生労働省から新型コロナ感染症対策として、3密(密閉・密集・密接)の回避、マスク着用、こまめな手洗い・うがいなどが推奨されています。生活の中でもテレワークの推進やテイクアウトの利用など、様々な働き方や習慣に変化がありました。
その中で注目されているのが「換気の悪い密閉空間」を改善として、室内の空気を衛生的に保つために換気対策です。厚生労働省より良好な換気状態の基準として二酸化炭素濃度(CO2濃度)1,000ppm以下が下記の通り提示されております。(図4)
図4:感染防止のための二酸化炭素濃度基準
社員が集まるオフィスや会議室でCO2は目に見えませんが、このCO2濃度をCO2センサにより計測することで適切な換気対策を行うことができるようになります。
室内のCO2濃度は、建築物において1000ppm以下(厚生労働省/建築物環境衛生管理基準)、教育施設は1500ppm以下(文部科学省/学校環境衛生基準)に保つように定められています。アメリカ暖房冷房空調学会が定める推奨値でも、1000ppm以下とされています。
これらの基準は、CO2濃度が上がると人体に悪い影響があるために定められています。CO2濃度は2000ppm程度であれば有毒性はありません。しかし、濃度が1500ppmを超えると眠気や不快感により作業効率が著しく低下することもあります。濃度が3000ppmを超えると頭痛・めまい・吐き気を起こし、5000ppmを超えると意識を失うこともあります。(図5)
図5:CO2濃度の管理基準
適切な換気によるCO2濃度のコントロールは、新型コロナ感染症対策だけでなく仕事への集中力が高まり業績アップにつながることが期待されます。
紹介する環境モニタリングシステムでは、OMRON社製の環境センサを利用します。環境センサとCONPROSYSはUSB通信により計測データを取得する方法を選択しました。
計測のための準備として、拡張SDKの機能を利用して環境センサとの通信処理を行うためのプログラムをSDカードにいれたものをCONPROSYSに挿入します。
環境センサの側面には、照度を計測するためのセンサも内蔵しています。例えば机上面の照度を得るような場合は、センサが上向きに設置されている必要があるため、USB延長ケーブルを使用してCONPROSYSのUSBポートと接続を行うことで、環境センサの位置や設置の向きを自由にできるようにしています。
設置した様子
本コラムで紹介をしている環境モニタリングの動作環境を、「CONPROSYS VTC スクリプト 100選」として公開をしています。
「CONPROSYS VTC スクリプト 100選」では、CONPROSYSを利用して実現するIoT化に必要なノウハウを公開しています。簡単な使用説明とダウンロードしてすぐに利用できるプログラムにより、色々な活用例を参照・実行することが可能です。
「スクリプト 100選」の中から、環境モニタリング機能を選択してダウンロードを行い、サンプルタスクの説明書に従ってCONPROSYSにプログラムをセットアップしてください。モニタリング画面を表示すると下記のような画面で環境データの計測値を表示できます。
サンプル画面では計測したデータをできるだけ表示するデザインにしているので、優先して管理を行いたいデータがどこなのか判りづらいこともあります。サンプル画面をカスタマイズすることにより、今回説明をした職場環境を快適に維持するためのデータに注目しやすい画面を作ることもできます。
下記の画面例では、「熱中症危険度」「不快指数」「CO2濃度」の値を、閾値により色が変化するバー表示と計測データのグラフ表示を行うようなに変更しています。CONPROSYSでは、このような画面変更もお絵描きソフト感覚で作ることが可能です。
CONPROSYSは、産業用途でも安定して動作する信頼性と長期安定供給で安心して使い続けられるハードウェアに、様々の場所でのIoT化を実現するための便利機能を実現するソフトウェアが一体となった製品です。CONPROSYSを上手に活用すれば、簡単に監視やクラウドサービスへのゲートウェイとして、購入してすぐに活用する事ができます。
コンテックでは、今後も進化するIoT社会になくてはならない製品を提案していきます。ご期待下さい。
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