2022/07/15
最終更新日:2023/06/16
IoTの通信技術には、低い消費電力で広範囲をカバーできるネットワークが求められます。LPWAは、そんなIoT時代に適した無線ネットワーク技術の一種です。今回は、LPWAの特長と種類を解説した後、コンテックが提供しているLPWA製品をご紹介します。
LPWA とは、「Low Power Wide Area」の略で、低消費電力で広域をカバーできる無線通信ネットワークの総称です。一般的に、無線LANやBluetoothより長距離(数km~数十km)のデータ通信が可能で、携帯電話のモバイル通信より低消費電力という特長があります。
通信速度を抑えることにより、長距離(数km~数十km)のデータ通信を実現しています。広範囲をカバーすることができますので、工場、山間部、農地、都市のセンサデータ監視に利用できます。
通信頻度を抑えることにより、低消費電力を実現しています。広範囲に設置されたセンサ搭載デバイスのバッテリを交換することは容易ではないため、バッテリの消費を抑えることができる低消費電力は需要な要素です。
一般的な携帯通信網のデータ通信より低コストのデータ通信ネットワークが構成できます。セルラー系のLPWAでは携帯通信網のインフラを利用しますが、通信量を抑えることで低コストでの運用を可能にしています。多数のデバイスから少量のセンサデータを集める用途に向いています。
スマートフォンを利用するとき、場面に合わせて無線通信を切り替えて利用している方も多いのではないでしょうか。例えば、以下のような無線通信の切り替えが考えられます。
通信を切り替えて利用している理由は、それぞれに以下のような特徴があるためです。
スマートフォンを操作してデータ通信を行うとき、高速で大容量の通信が使えるほうが便利です。そうした需要をもとに、無線通信ネットワークも発展してきました。しかし、さまざまなデバイスやセンサがインターネットに接続されるIoTの分野では、別の性能を求められることがあります。
例えば、プラントの広い敷地内各所の温度をデータ通信で集めることを想定してみましょう。この場合、Bluetoothや無線LANでは通信距離が短すぎて敷地内すべてをカバーできません。モバイル通信では、広範囲をカバーできますが、消費電力がネックです。
敷地内で電源のない場所において温度センサは、電池搭載のものを使う必要があるかもしれません。消費電力が高くなると、頻繁に電池交換が必要になります。画像や音声と違って、温度データはデータ量・通信頻度ともに少量です。
このような用途では、通信速度やデータ容量よりも低消費電力で通信できることが求められます。そこで低消費電力のLPWAを使えば、電池交換の頻度を下げて長期間の使用が可能になるというわけです。IoTに求められる「広範囲カバー」と「長期間のデータ通信」を実現するため、長い通信距離と低消費電力の無線通信ネットワークとして、LPWAは策定されました。
LPWA は、大別すると「セルラー系LPWA」「非セルラー系LPWA」があります。
LPWAには複数の規格が存在しています。主なものを下記一覧表にまとめています。
Cat.M1とは、LTE帯域周波数を利用するセルラー系の通信方式で、上り1Mbps / 下り1Mbps と、他のLPWA通信方式に比べて高速通信が可能な点が大きな特長です。伝送距離は数km~十数kmで、広範囲をカバーできます。推進団体は、各国地域で構成される標準化機関「3GPP (3rd Generation Partnership Project)」です。
Cat.M1は、免許の必要な大手通信事業者のネットワークを利用できるため、非セルラー系の通信方式に比べて広範囲かつ安定した通信を実現しています。一方で、「消費電力は大きい」「コストがかかる」といった点はデメリットです。比較的データ転送量の多い場合に有効な通信方式です。
NB-IoTの「NB」とは「Narrow Band」の略称で、Cat.M1と同じく3GPPの推進する免許の必要なセルラー系の通信方式です。LTE帯域周波数の一部(狭い周波数)を利用するため、Cat.M1に比べて低コストかつ伝送速度の遅い通信方式となります。伝送速度は上り約63kbps / 下り約27kbps、伝送距離は数km~十数kmです。
Cat.M1よりもさらにIoTに振った仕様となっており、通信量が少ないが多くのデバイスを用いる場合にコストを抑えることが期待できます。
Sigfoxとは、フランスの「SIGFOX」が推進する非セルラー系のLPWA通信方式です。日本では、920MHzの周波数帯域を利用しています。伝送速度は上り100bps / 下り600bpsと低速ですが、伝送距離は数km~数十kmとかなりの広範囲をカバーでき、なおかつ低コスト・低消費電力で利用できます。
上りデータ量は、1回の送信で12バイト、通信回数は1日140回までに制限されているため、スマートメーターなどの通信量、通信回数の少ないIoTに適しています。
基地局の設置に免許が不要なノンライセンスバンドですが、実際には基地局を設置するのは1国に1社だけのSIGFOXネットワーク事業者となり、日本では京セラコミュニケーションシステム社(KCCS)が基地局の設置、通信サービスの提供を行っています。
LoRaはSemtech社が開発したLPWAの物理層を規定した規格で、その名称はLong Rangeに由来しています。本方式の日本における周波数帯域は、920MHzです。伝送速度は上り0.3kbps / 下り50kbpsと低速ながらSigfoxより高速の通信になります。伝送距離は数km~十数kmで、低コスト・低消費電力で利用できます。
免許不要のノンライセンスバンドで、SIGFOXが必ずSIGFOXネットワーク事業者から提供されたインフラを使用するのに対し、自営の基地局での設置利用が可能になっています。LoRaで規定されているのは物理層だけであるため、LoRa基地局とLoRaデバイスの通信は各社独自の実装となり、相互の互換はありません。
LoRaは物理層だけの規定ですが、無線通信ネットワークとしてLoRaアライアンスが規定している規格がLoRaWANになります。無線通信ネットワークとして規定されているため、各社のLoRaWAN基地局とLoRaWANデバイスは相互に通信可能です。
自営の基地局を設置して利用することの他に、事業者が設置したLoRaWAN基地局を利用することもできます。事業者が設置したLoRaWAN基地局の利用には、事業者との利用契約が必要です。
IEEE標準規格802.11ah(Wi-Fi HaLow™)は、920MHz帯の周波数を利用する通信手段のひとつでWi-Fiシステムの特長を継承しつつ、IoT向けの通信システムとして期待される新しい通信規格です。基本的な動作原理は特にIoTの通信システムとして様々な分野で活用が期待される新しい種類のWi-Fi規格です。
数百mから1Km程度までの通信距離を実現し、通信速度も100Kbpsから数Mbps程度の通信が可能なため他のLPWA規格では難しい動画伝送も可能にしています。従来のWi-Fiと同様に異なるメーカーの製品でもIPベースで通信が可能なことから、より多様なユースケースへの導入・活用が広がると考えられます。
コンテックでは、LoRa規格に対応した製品と、サブギガ帯の周波数帯を利用した無線製品を用意しています。
CPS-COM-1QLは、当社のIoTコントローラ機器であるCONPROSYSシリーズに対応したLoRa無線通信モジュールに対応したLoRa変調方式採用の屋外通信用モジュールです。10km以上離れた場所のIoTコントローラ機器間で無線通信が行えるようになります。
コンテックでは、「六甲山ケーブル山上駅横 天覧台(兵庫県)」と「舞洲スポーツアイランド 風そよぐ丘(大阪府)」との間の約17kmで新製品の通信テストを実施、安定した通信が行えることを実証しています。
サブギガ帯(日本では920MHz)の周波数帯を利用し、デジタル入出力やアナログ入出力を実現するワイヤレスI/Oを用意。前述のLoRa規格に比べて通信距離は1Km程度と短くなりますが、より手軽にシステムを構築できます。
ゲートウェイ(親機)
アナログ入力(子機)
絶縁デジタル入出力(子機)
2台のデジタル入出力ターミナルを対向させて、信号を透過するモードです。親機やPC/PLCを必要とせず、一方の入力状態をそのままもう一方の出力状態に反映でき、最大1Kmまでの通信が可能です。
ワイヤレスI/Oシリーズをより詳しく
コンテックのLPWA製品は、IoTにおいて豊富なラインナップをそろえるCONPROSYSシリーズと組み合わせることで、さまざまなシーンでご利用いただけます。IoTソリューションをご検討中でしたら、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
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