2023/08/02
産業用マザーボードは、工場や製造装置、医療機械、社会インフラなど、信頼性が重要視される場面で使われるコンピュータの重要な部品です。しかし、その特性や選び方は一般的なPCのマザーボードとは異なり、使用する目的や用途に合ったものを選択する必要があります。今回は、産業用マザーボードの基本的な知識から選び方までを解説します。
マザーボードはコンピュータの構成部品の機能を統合し、コンピュータが動作するための中心的な役割を担っています。CPUやメモリなどの重要な部品は、マザーボード上に搭載され、電源や記憶装置など外部入出力装置もマザーボードに接続されコンピュータとして動作しています。
マザーボードによって、データ分析やインターネットへの接続、最近注目されているAIコンピューティングなどの機能を持つアプリケーションを利用できるようになります。
民生用マザーボードとは、一般的な家庭や個人向けのコンピュータに使用される大量生産タイプのマザーボードです。一方、産業用マザーボードは工場や製造装置、医療機械、社会インフラなど、信頼性が重要視される場所で使われます。
産業用マザーボードの主な特長は、以下の4つです。
産業用途では、導入したシステムが長く利用されるため長期間にわたり安定した供給が必要です。また、一部の産業用途では停止が許されないため、高い信頼性が求められます。さらに、設置する環境によっては、温度や湿度、振動など厳しい状況でも動作を続ける能力が必要です。特殊な接続方法やスロットの数を要求するケースなら、対応するためのカスタマイズが求められるでしょう。
一方で、産業用マザーボードにも以下のようなデメリットがあります。
高品質な部品の使用、および独自サポート体制の構築により特殊な設計を行うため、産業用マザーボードは民生用よりも価格が高い傾向です。また、少量生産や信頼性を確保するための検査体制などにより、製品の納期が長くなる場合があることもデメリットといえます。
マザーボードを選択する際のチェック項目を以下に説明します。
マザーボードのサイズには、主に以下のようなものがあります。
選択するサイズは、構築するシステムの用途や配置スペースによるため、サイズごとの特性を確認しておきましょう。
産業用マザーボードの場合、特に耐環境性や長期安定供給などの観点から、サイズだけでなくその他の機能や特性も重要です。
マザーボードの機能や特性、処理能力を決めるのがプロセッサ(CPU)です。必要なパフォーマンスや電力効率を考慮して選びましょう。以下は、代表的なプロセッサ・ファミリとその特徴です。そのプロセッサ・ファミリを採用しているコンテックの製品も紹介します。
サーバコンピュータ向けのプロセッサです。スケーラブルというのは、1つのプラットフォームで、ハイエンドからローエンドのプロセッサが使用できるという意味です。ローエンドといってもサーバ用途においての意味で、具体的には、数コアから数十コア(メニーコア)のCPU、また1-CPU(1-way)から2-CPU(2-way)、4-CPU(4-way)といった複数CPU構成が行えるという意味です。サーバ用途だけでなく、スレッドの数がモノを言う科学技術計算、推論学習、ディープラーニングといったワークロードにも使われます。
コンテックは、Xeon Scalable Processorを搭載可能で、サーバOSとしてWindows IoT Server、MIRACLE LINUXを選択できるサーバグレードのFAコンピュータをラインアップしています。
サーバコンピュータ向けのプロセッサです。CPUとPCHとが統合されたシステム・オン・チップのプロセッサで、スケーラブル・プロセッサよりフットプリントが小さく省電力なプラットフォームです。小規模向けサーバコンピュータ、移動体、装置組み込みの用途にも適用します。
ワークステーションやエントリーレベルのサーバコンピュータ向けプロセッサです。工業用途では工場のデータ収集サーバ、高度な画像処理、一般用途では、写真・動画の映像クリエイティブ作業やハードウェア/ソフトウェア設計開発業務向けのコンピータで採用されます。
コンテックは、Xeon E Processorを搭載可能で、Windows for IoT、MIRACLE LINUXを選択できるワークステーショングレードのFAコンピュータをラインアップしています。
デスクトップタイプ、ラックマウントタイプ、装置組み込みタイプなど、さまざまな形状のコンピュータに採用されるプロセッサです。幅広い用途で使われます。コンテックでもさまざまな製品をラインアップしています。コンピュータメーカやニュース記事では、開発コード名と組み合わせて、Coffee Lake-S、Comet Lake-S、Alder Lake-Sと表記される場合があります。
Xeonプロセッサに比べれば省電力ですが、非常に高い処理能力を持っており、FANモータ+ヒートシンクでCPUの発熱を処理するのが普通ですが、コンテックは、同時の放熱技術でファンレスタイプの組み込み用コンピュータを開発しています。
ラップトップ、ノートブックなどのモバイルコンピュータ、ファンレスタイプの組み込み用コンピュータで採用されるプロセッサです。コンテックでもさまざまな製品をラインアップしています。コンピュータメーカやニュース記事では、開発コード名と組み合わせて、Kaby Lake-U、Whiskey Lake-Uと表記される場合があります。コンテックは、同時の放熱技術で厚み約30mmの薄型の組み込み用コンピュータを開発しています。
タブレットや小型の組み込み用コンピュータで採用されるプロセッサです。コンテックでもさまざまな製品をラインアップしています。コンピュータメーカやニュース記事では、世代を区別するために開発コード名で呼ばれることが多いです。(BayTrail、Apollo Lake、Elkhart Lake)
拡張スロットには、グラフィックボードや計測ボードなどの機能追加ボードをセットすることができます。使用する拡張ボードに必要なスロットの数と種類を確認することが重要です。スロットの種類には、PCI/PCI Express(x1/x4/x8/x16)などがあります。
マザーボードのI/Oパネルには、DVI(Digital Visual Interface)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)などの画面出力や周辺装置を接続するUSBポート、記録メディアを接続するSerial ATAのポートなどがあります。これらは適合するインターフェイスの確認が必要です。
メモリ搭載最大量(ECCメモリへの対応)、RAID機能の有無、M.2スロットの搭載およびKeyの種類なども重要な確認項目です。
産業用マザーボードは、その高信頼性と耐環境性から、さまざまな業界で使用されています。しかし、その特性を最大限に活かすためには、適切なマザーボードを選択することが不可欠です。サイズやCPU・チップセット、拡張スロット、インターフェイス、その他の確認項目を見極めたうえで、自身の業務に最適なマザーボードを選びましょう。
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