産業用コンピュータの基礎知識(拡張スロット)

産業用コンピュータの拡張スロット

産業用コンピュータには、機能拡張用の基板 (以下、拡張ボード) を実装できる拡張スロットを搭載しているモデルがあります。拡張ボードはPCI Expressバス準拠のタイプとPCIバス準拠のタイプがあります。

PCIバス

PCI (Peripheral Component Interconnect) は、拡張ボードのバスインターフェイス規格です。32bitまたは64bitのデータバス幅でデータをパラレル伝送します。1992年にインテル社から発表され、コンピュータに機能を拡張するための標準インターフェイス規格として広く普及しました。2003年に後継となるPCI Expressバスが登場し、主流はPCI Expressバスに移っています。民生用PCでは姿を消しましたが、産業用途では多くの周辺機器の資産があります。産業用コンピュータでは、この資産を活用できるPCIバス拡張スロット付きの製品があります。

PCI規格一覧

PCI Expressバス

PCI Express (Peripheral Component Interconnect Express) はPCIの後継となるバスインターフェイス規格です。後継といってもPCI ExpressとPCIとでは物理的にも電気的にも互換性はありません。PCI Expressは、PCIと異なりデータをシリアル伝送します。「レーン」と呼ぶ複数のシリアル伝送ラインを同時利用することで伝送速度を向上させることができます。

PCI規格一覧

PCI Expressバスの互換性 (レーン)

PCI Expressバスはレーン数において下表のとおり互換性があります。拡張スロットの物理的な形状と信号(レーン)が異なる場合があるので、ご注意ください。例えば、物理的形状がx16であっても、信号がx8のスロットではx16のボードはx8の性能の範囲で動作します。規格どおりでなく(互換性がなく)、動作しない製品の組み合わせもありますので注意してください。

産業用コンピュータの
PCI Express拡張スロット
PCI Express ボード
物理的形状 信号(レーン数) x1 x4 x8 x16
x1 x1 × × ×
x4 x1 × ×
x4 × ×
x8 x4 ×
x8 ×
x16 x8
x16
凡例
  • ◎:実装できる/拡張ボードの上限性能で動作する
  • 〇:実装できる/拡張スロットの信号(レーン数)の範囲で動作する
  • ×:実装できない/動作しない

PCI Expressバスの互換性 (バージョン)

PCI Expressバスは後方互換性を保ちながらバージョン(リビジョン)アップが図られています。例えば、PCI Express 2.0 (Gen2) の拡張スロットで、PCI Express 3.0 (Gen3) の拡張ボードは動作しますが、上限性能はPCI Express 2.0 (Gen2) の範囲となります。規格どおりでなく(互換性がなく)、動作しない製品の組み合わせもありますので注意してください。

バージョン 制定 データ転送速度 (1レーンあたり)
PCI Express 1.x (Gen1) 2002年~2005年 2.5GT/s
PCI Express 2.0 (Gen2) 2007年 5GT/s
PCI Express 3.0 (Gen3) 2010年 8GT/s
PCI Express 4.0 (Gen4) 2017年 16GT/s
PCI Express 5.0 (Gen5) 2019年 32GT/s

M.2

M.2 (エムドットツー) は、コンピュータの内部拡張モジュールのフォームファクタと接続端子を定めた規格です。バスインターフェイスの規格ではありません。mSATAの後継の位置づけで NGFF (Next Generation Form Factor) とも呼ばれていました。M.2モジュールは、幅や長さで柔軟性があり、ノートパソコンやタブレット端末などの小型デバイスに適した規格です。小型化が求められる産業用コンピュータにおいても有効で普及が始まっています。仕様で表記される数字4桁は縦横のサイズ (mm) を表しています。

またM.2モジュールは端子形状の違い (Key ID) で種類があります。

Key ID 欠くピン 対応インターフェイス
A 8–15 2x PCIe(x1), USB 2.0, I2C, DP×4
B 12–19 PCIe×2, SATA, USB 2.0 and 3.0, Audio, PCM, IUM, SSIC, I2C
C 16–23 将来のため予約
D 20–27 将来のため予約
E 24–31 2×(PCIe×1), USB 2.0, I2C, SDIO, UART, PCM
F 28–35 Future Memory Interface (FMI)
G 39–46 汎用(M.2規格で指定しない)
H 43–50 将来のため予約
J 47–54 将来のため予約
K 51–58 将来のため予約
L 55–62 将来のため予約
M 59–66 PCIe×4, SATA

M.2スロット/モジュールの形状(key A / key E / Key A+E)

M.2スロット/モジュールの形状(key B / key M / Key B+M)

ボックスコンピュータ BX-T210 のマザーボードは、背面にM.2モジュールを実装できるように2つのM.2ソケットがレイアウトされています。無線LANのM.2モジュールを搭載したWi-Fiモデルを標準品として展開しています。

ボックスコンピュータ BX-M210 のマザーボードもBX-T210と同様で背面にM.2モジュールを実装できるように2つのM.2ソケットがレイアウトされています。絶縁デジタルI/OのM.2モジュールを搭載したモデル、SATAストレージスロットを搭載したモデルを標準品として展開しています。お客様のご要望に合わせて機能拡張したカスタマイズ品が提供可能です。