パソコンの歴史が語るRaspberry Pi(ラズパイ)産業利用の必然性とコンテックのアプローチ

コンテックでは、2021年4月に「ラズベリーパイの手軽さをFAに、計測制御に」をテーマに、Raspberry Pi対応HATサイズ拡張ボードの販売を開始しました。本コラムでは、コンテックの「Raspberry Pi」(以下、ラズパイ)の拡張ボードに対するコンセプトや想定される用途について紹介します。

目次

パソコン用計測制御インターフェイスボードの歴史

日本のパーソナルコンピュータ(以下、PC)の歴史は、NEC社から1979年に発売されたPC-8001からスタートしました。コンテックでも1982年からNEC社のPC-8001のIOユニット「PC-8012」およびPC-8801で利用可能なパソコン用インターフェイスボードの開発、販売を開始しています。その後、NEC社では16ビットCPUを搭載したPC-9801を発売。また、海外でスタンダートとなったIBM-PC互換PC(DOS/V)の日本での広がり、グラフィカルなUIでPCを操作できるWindowsの登場など、PCを取り巻く環境は時代の変化とともに大きく発展しました。

西暦年 出来事
1979年
  • NEC社が8ビットCPU搭載のパーソナルコンピュータ PC-8001 を発売。日本のパーソナルコンピュータの歴史がスタート。
1982年
  • コンテックがNEC社 PC-8001のI/Oユニット PC-8012 および PC-8801用インターフェイスボードを発売。
  • NEC社が16ビットCPU搭載のパーソナルコンピュータ PC-9801 を発売。
1988年
  • コンテックがNEC社 PC-9801用インターフェイスボードを発売。
1990年
  • 日本アイ・ビー・エムが PC/AT互換機で動作する日本語OS「DOS/V」を発表。
1991年
  • マイクロソフトが日本法人を設立。
  • 出典:フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」およびコンテックの「沿革」より

コンテックのパソコン用インターフェイスボードも「パソコンの手軽さをFAに!」の合言葉のもと、PCに求められる多様なインターフェイスボードの開発・販売や、時代と共に性能が向上する拡張バスへの対応などを行い、産業用途で活用されるPCの発展に貢献してきました。

現在では、IntelやAMDなどのPC専用に開発されているCPUだけなく、ARMアーキテクチャを採用したマイコンも、産業、教育、流通、通信などの分野で急速に採用されています。ラズパイはARMアーキテクチャ採用したPCとも言える存在で、産業用途での活用に対する関心も高まっており、新たなデファクトスタンダードとして成長しています。コンテックでは、誰でも手軽にFAで利用できる製品の提供をしてきましたが、ラズパイに対応した拡張ボードの開発・販売も同様に展開し、簡単に産業用途でラズパイが活用できる製品を今後も提供し続けていきます。

産業用途でも注目され始めたラズパイ

2012年に教育用途で利用されることを想定して発売されたラズパイですが、発売から約10年が経過し、そのコンセプトを維持しながら第4世代まで進化しています。この歴史の中で、ラズパイは、数多くの周辺機器、教育用途にとどまらない採用事例を生み出し、手軽にプログラムが開発できるプラットフォームとして、ますます知名度が高まっています。

産業用の組込み用途のニーズに応える形で「Raspberry Pi Compute Module」も発売されており、産業用途でもラズパイのプラットフォームを活用する企業が増えており、2018年6月時点で月産台数の60%が産業用途で使われているとRaspberry Pi 財団が公表しています。

産業用途利用時のメリット

ラズパイを産業用途で利用する場合のメリットについて以下に説明します。

様々なインターフェイスを活用するための情報がインターネット上に豊富にある

ラズパイが検討される一番の理由が安価であることと思われがちですが、実際には自社製品に採用することを考慮すると、安価であることよりも周辺機器が多く、それに伴い様々なインターフェイスを活用するための情報がインターネット上に豊富にあることが最大のメリットです。

自社製品にコントローラを採用したり、自社工場での改善活動に利用したりする場合には、プログラムを作るための情報を収集したり、そこで動作するソフトウェアの開発工数が大きなコストとなります。
ラズパイを採用した場合には、「特定のセンサを利用したい」「周辺装置と通信を行いたい」「クラウドサービスと接続したい」といった様々な要望に応える情報を簡単に入手することが可能です。ラズパイの世界では、全ての情報が信頼の高い情報ではない可能性があるため情報を精査して検証する必要もあるのですが、参考にできる情報が豊富にあるということは、ソフトウェアを開発するうえで大きなメリットとなります。

ソフトウェアの資産を豊富に利用できるLinuxの資産が活用可能

また、従来のソフトウェアの開発は、ウォーターフォールモデルによる開発手法が主流で、最初に全体の基本設計・スケジュールを決定し、この計画に従って開発・実装を行っていきます。今でも大規模なシステム開発や信頼性が必要とされるソフトウェアは、このような方法により生み出されます。しかし、最近では開発期間の短縮が求められ、新規性の高いソフトウェアの開発が要求されるようになっています。このため、従来の開発手法より開発期間の短縮が可能なアジャイル開発が注目されています。

アジャイル開発は、リリースの計画段階で厳密な仕様を決定せずに開発を行い、メンバー間でのコミュニケーションを重視し、開発の途中で仕様の変更や追加に柔軟に対応できる開発手法です。

このような開発手法を採用している場合にも、ソフトウェアの資産を豊富に利用できるLinuxの資産が活用可能で、多くの周辺機器との接続事例を簡単に入手できるラズパイの開発環境は、プロトタイプでの検証から実稼働までをスムーズに進めることができます。

産業用途利用時のデメリット

USBポートから供給される電源容量の不足とSDカードの信頼性に関する動作の不安定性

一方で、ラズパイを産業用途で利用する際のデメリットとしては、USBポートから供給される電源容量の不足とSDカードの信頼性に関する動作の不安定性が挙げられます。

電源容量については、ラズパイのボードを単独使用するような場合には大きな問題にはならないですが、USBを利用した周辺機器の接続や、表示装置や入出力ボードを拡張した場合には供給電力不足になることがあります。産業用途でラズパイを利用する場合には、トータルの消費電力を考慮する必要があります。

SDカードの信頼性に関しては、シリコンディスクの書き換え回数の問題やSDカードの故障、計測データが壊れるといった事象が発生する可能性をなくすことはできません。産業用途向けに製造されているSDカードを使用し、システム設計段階でSDカードにデータ書き込まないようにクラウドやネットワークストレージに計測データを保存するなどの対策によって、リスクを少なくすることをお勧めします。

内蔵しているカレンダー時計がバックアップされない

また、教育用途に使用目的を絞って設計が行われているラズパイには、内蔵しているカレンダー時計がバックアップされない(電源OFFで日付・時刻が消える)という特徴があります。常にネットワークに接続してタイムサーバと同期が可能な環境ならば大きな問題となりませんが、装置や機器に組込みを行う用途ではネットワークに接続できないことも多く、またカレンダーや時間を管理して動作させる場合もあることからシステム設計時に対策を考慮する必要があります。

機能拡張について

ラズパイに機能拡張を行う方法として、通常のパソコンのよう にLANポートやUSBインターフェイスの他に、HAT(Hardware Attached on Top)と呼ばれる40ピンのピンヘッダで基板をスタック接続する拡張方法が提供されています。Raspberry Pi 財団から公開された仕様には、ボードの物理的レイアウトと、生産者の情報、Linuxがピンを正しく認識して拡張したボートに接続するためのGPIOの設定、デバイスツリーの一部を収めるオンボード I2C EEPROMメモリーに関する情報が規定されています。

ピンヘッダには、GPIO、UART、I2C、SPI、I2S、PWMなどの拡張に必要な信号が配置されています。

  • Embedded Linux Wikiより。

ラズパイの標準OSである「Raspbian」では、「gpio」コマンドにより、GPIOの設定やステータスを得ることができます。また、「RPi.GPIO」と呼ばれるPythonのパッケージも用意されているので、スクリプト言語のPythonやPHPから簡単に実行することもできます。

ラズパイに拡張ボードを取付ける場合には、下記のような手順になります。

産業用途へのアプローチ

コンテックではラズパイ対応の拡張インターフェイス(CPIシリーズ)を販売開始しました。

CPIシリーズでは、安心してラズパイを産業用途で利用をするために下記のような工夫をしました。

電源容量不足に対する対策

先に説明したように、ラズパイのUSBポートによる電源供給では、周辺装置や拡張ボードを接続した場合に不安があります。コンテックでは産業分野向けに多くの製品を出荷している経験からラズパイでも12-24VのDC電源から電源供給を行えることが必要と考えました。RAS/RTCボード(CPI-RAS)には、ラズバイを駆動する電源としてDC電源を供給できる電源コネクタを設け、供給可能な電源も8V-28VDCの幅広い電圧に対応可能としています。また電源回路には、5VDC 5A生成可能な高出力高効率電源と外来ノイズを除去するノイズフィルタを搭載し、クリーンな電源をラズパイのCPUボードに供給します。これにより、周辺装置や複数枚の拡張ボードを増設した場合、バッテリで動作する移動体に搭載した場合でも安定した電源の供給が可能となります。

プログラムの安定動作に対する対策

ラズパイを産業用途で利用する場合、完成度の高いソフトウェアが必要となるのですが、何らかの要因でプログラムが停止、想定しない条件で誤動作することもあります。このようなソフトウェアの不具合でもシステム的には、安全に停止させ自動的に復旧する仕組みが必要になります。RAS/RTCボード(CPI-RAS)には、ウォッチドックタイマ(WDT)の機能を内蔵しています。万が一CPUが暴走した場合など、想定外のプログラムの動作が行われた場合でもハードウェア的にCPUをリブートさせることが可能です。

また、教育用途を想定したラズパイは、動作温度に関しても不安がある方もおられると思います。RAS/RTCボード(CPI-RAS)には、搭載されたマイコンチップの機能を利用してRAS/RTCボードの温度を測定することが可能です。これによりラズパイ周辺温度の変化を確認することが可能で、周辺温度環境を改善するために送風用のファンや冷却装置設置などの対策を行うための目安とすることが可能です。

産業アプリケーションに対応する機能

産業用途のシステムを構築する場合、正確な時刻管理が必要な場合が多くあります。ラズバイに搭載されている時計機能(RTC)はバッテリによるバックアップ機能もなく、温度補償のRTCでは一般的な環境温度である25℃での時刻は正確ですが、低温環境や高温環境では内部水晶の特性により遅れやすい性質を持っています。RAS/RTCボード(CPI-RAS)には、バッテリバックアップが可能な温度補償を備えたRTCが搭載されており、温度環境により時刻補正が行われることで時刻の精度向上を図っています。

また、タイマ割り込みによる間欠動作にも対応しているので、指定日時にラズパイを起動するような用途でもご利用可能です。シャットダウン状態の時に消費電流が最小限になるように専用の低消費電力電源回路を搭載しています。

RAS/RTCボード(CPI-RAS)には、ラズパイでも電源スイッチ機能を実現できるように、電源スイッチおよびインターフェイスコネクタのデジタル入力から電源操作が行えるようにしました。長押しによる、強制電源OFF機能にも対応していますので、組込み用途での運用で便利な機能となっています。

便利なソフトウェア開発環境を提供

ラズパイで利用可能なコンテックの拡張ボードを便利に利用していただくために、RAS/RTCボード用のドライバとデジタル入出力ドライバを提供しています。過去にWindowsを利用して当社計測ボードのアプリケーション開発をして頂いているお客様が違和感なく簡単にラズパイでも開発して頂けるよう、Windows版のAPI-PAC/API-TOOLと互換性を考慮した関数群を提供しています。

技術的な疑問を解決できる場の提供

コンテックのラズパイ用拡張ボードの技術的な疑問点を解決できる場所として、「CONTEC Discussion Form」を用意しています。コンテックの製品やソフトウェアに関する問い合わせ・相談・依頼を行うサイトであり、コンテックからの情報発信や回答だけでなく、自動翻訳機能により世界中の技術者と問題解決を行うことが可能な場所となっています。

RAS/RTC Raspberry Pi ボード(CPI-RAS)の特徴

CPI-RASはラズパイにRAS機能およびRTC 機能、8V-28VDC電源入力機能を増設する拡張ボードです。40ピンのピンヘッダでスタック接続するHATサイズの拡張ボードで、ラズパイを産業用途でご利用頂く用途に可用性・保守性を付加できます。

  • Raspberry Piの可能性を広げるRAS機能拡張ボード
    • 8V-28VDC電源機能を搭載。Raspberry Piを8V-28VDCの電源環境で使用できます。
  • 配線しやすいプッシュ式ブロック端子台を採用
    • 工具・圧着端子不要のプッシュ式、結線したまま着脱できる便利で使いやすい端子台を採用しています。
  • 電源スイッチ機能搭載
    • 一般的なパソコンに搭載されている、電源スイッチ機能をRaspberry Piに追加することができます。 また、長押しによる、強制電源OFF機能も対応しています。 操作は本製品に搭載されている、プッシュスイッチまたは外部拡張コネクタのデジタル入力から行えます。
  • 温度補償リアルタイムクロック(RTC)搭載
    • RTC内部に温度補償を備えており、温度環境により時刻補正を行うため、時刻の精度向上を行っています。また、タイマ割り込みによる間欠動作に対応しており、起動日時を設定することにより、指定日時にRaspberry Piを起動することが可能です。

Raspberry Pi デジタル入出力ボードの特徴

デジタル入出力ボードは、ラズパイにフォトカプラ絶縁デジタル入出力を増設する拡張ボードです。

40ピンのピンヘッダでスタック接続するHATサイズの拡張ボードで、ラズパイに計測制御にデジタル入出力機能を付加します。

型式 機能仕様
CPI-DIO-0808L 絶縁デジタル入出力 8点/8点
CPI-DIO-0808RL 逆コモン絶縁デジタル入出力 8点/8点
CPI-DI-16L 絶縁デジタル入力 16点
CPI-DO-16L 絶縁デジタル出力 16点
CPI-DO-16RL 逆コモン絶縁デジタル出力 16点
CPI-RRY-16 半導体リレー出力 16点
  • 配線しやすいプッシュ式ブロック端子台を採用
    • 工具・圧着端子不要のプッシュ式、結線したまま着脱できる便利で使いやすい端子台を採用しています。
  • 最大8枚のスタック接続に対応
    • HAT仕様にアドレスID設定を拡張、最大8枚のスタック接続できます。 ※ 他社HATとの混在が可能です。
  • パソコン用拡張ボードとAPI互換、Pythonに対応
    • 当社製 PCI Express / PCI / USB / Ethernetタイプの計測制御用デバイスとAPI互換。複数のプラットフォームで開発資産を流用できます。PythonやGCCのサンプルプログラムを提供していますのですぐにプログラミングを開始できます。
  • 豊富な入出力タイプを提供
    • 16点入力/16点出力/8点入力8点出力で電流シンクタイプ、オープンコレクタ、ソース出力に対応可能豊富な種類を提供します。16点の半導体リレー出力も用意しました。
      駆動電圧は、入出力共に12-24VDCに対応しています。
  • フォトカプラによるバス絶縁
    • フォトカプラにより、Raspberry PiのGPIO 40PINコネクタと入出力インターフェイスは絶縁されているため、耐ノイズ性に優れています。
      ※CPI-RRY-16は、フォトMOSによるバス絶縁仕様となっています。
  • -20 ~ 60℃の周囲温度に対応
    • -20 ~ 60°Cの周囲温度環境に対応しており、さまざまな環境で使用可能です。

今後の展開

現在、コンテックのラズパイ用拡張ボードは、デジタル入出力ボードのみですが、今後アナログ入出力やRS-232C/RS-422などの通信ボード、特殊用途向けの専用ボードなどラズパイの産業用途での利用をバックアップできる製品を積極的に開発・発売していきます。

ラズパイの産業用途での利用は、今後も安価なハードウェアを利用でき使い勝手の良い開発環境という背景により、高信頼性で高性能を要求される分野にも徐々に浸透していくと考えています。まさにコンテックが創立した当初、ホビーユースと考えられていたパーソナルコンピュータが産業分野にも採用されはじめ、今ではなくてはならない存在になっているように、ラズパイも数年後には工場設備や組込み装置になくてはならない存在になると思われます。

「PC For All Automation」。コンテックではこの普遍的な理念のもと、産業用途でのラズパイの利活用をけん引する企業となれるよう、新製品開発やその活用法を提案していきます。

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